« これは便利! URL 圧縮サービス(無料) | トップページ | フィクションとノンフィクションの境界線 »

2005.02.02

テレビの嘘を見破る

今野 勉「テレビの嘘を見破る」(新潮新書)

NHKの番組改変や、テレビ東京の実験ねつ造など、テレビ番組の質が問われている。テレビ的真実とは何か? こんなときこそ、今野勉「テレビの嘘を見破る」の一読をお勧めする。

テレビというのは、制作にあたって日程や、制作費などさまざまな制約があり、常に「やらせ」と紙一重の演出や編集があるのが普通だ。しかし、放映されたものすべてが真実だと思い込んでいる人が少なからずいることも確かだ。

例えば、本書の冒頭で紹介されている「AIGスター生命」のCMのケースはどうだろう。

【水辺で遊ぶ親子のゾウ。突然足元が崩れて子ゾウは水中へ転落。お母さんゾウが鼻で子ゾウを岸に引っ張り上げ、二頭のゾウは何事も無かったかのように帰っていく。そして、「何が起こるかわからない世の中だから」というテロップが重なる】

この映像を見てなんの疑問も抱かない人もいるし、どうやって撮影したのだろうと興味を持つ人もいる。朝日新聞の「はてなTV」には、視聴者から多くの疑問が寄せられ、次のような回答が掲載されている。

<水に落ちるシーンは、カメラが偶然とらえたものです。雨期のあとで地面がゆるんでいて、くずれて転落しました。引っ張り上げられるのは偶然に落ちたゾウではなく別のゾウで、調教師の指示に従った2頭のゾウの「演技」だそうです。ちなみに、この2頭は本当の親子ではありません>(朝日新聞’03.11.25「はてなTV」)

このシーンは、別にドキュメンタリーではないし、誰に迷惑がかかるわけでもないので、何処からも抗議はきていないようだ。しかし、「感動的ないいシーンだ」「こんなシーンがよく撮れたものだ」と感心している人も多いに違いない。

CMや映画などは、初めから作り物という前提があるケースは問題が無いとしても、これがドキュメンタリーと称して、意図的に「感動的なシーン」が創られているとしたらどうだろう。事実を歪めて伝えてしまうこともあるかもしれない。

本書では、撮影上のさまざまな工夫や演出の例を挙げながら、「ドキュメンタリーとフィクションの境界線」を検証していく。そして、筆者は「ドキュメンタリーの演出は、倫理の問題でもなければ、許容の問題でもないのだ」として、最後に「伝えたいことがあれば、そのために考えられるありとあらゆる最善の方法を考える、というのが作り手の原点です」という結論にたどり着く。

もちろん明らかな「やらせ」や「ねつ造」は問題外だが、真面目なドキュメンタリー作品でも、多くの問題を抱えていることが見て取れて興味深い。(健)

テレビの嘘を見破る (新潮新書)


|

« これは便利! URL 圧縮サービス(無料) | トップページ | フィクションとノンフィクションの境界線 »

コメント

あまやま想氏の「携帯画面のパンドラ」を友人に勧められて、読んでみました。さすが、第三回碧天文芸大賞の最終選考まで残ったとだけあって、表現力がなかなか高いですね。まだ、若さゆえの荒削りなところはありますが、洗練されていくのではないかと思います。携帯サイトから始まる恋と現代の家族事情をうまくまとめた小説といえるのではないでしょうか?
もしよろしければ、皆様、一度読んでみてください。現在、碧天舎のホームページにて試し読みランキング1位ですよ。

投稿: 紀伊半島 | 2005.07.24 15:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40197/2783027

この記事へのトラックバック一覧です: テレビの嘘を見破る:

« これは便利! URL 圧縮サービス(無料) | トップページ | フィクションとノンフィクションの境界線 »