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2011.10.29

人は寂しい(09/05/21)再録 ー 北杜夫の死に寄せて

人はあるとき、ふっと寂しくなる。
どんなに華やかな人でも、自分に自信が持てなくなる。

あなたは誰ですか? 自分は誰ですか?
あなたの隣にいる人は、本当にあなたの味方ですか?

ワ~イ、ワ~イと騒いでいるけれど、
あなたは本当に楽しいですか?

北杜夫の「幽霊」にこんな一節がある。

人はなぜ追憶を語るのだろうか。
どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、やがて時間の深みのなかに姿を失うように見える。--だが、あのおぼろな昔に人の心にしのびこみ、そっと爪跡を残していった事柄を、人は知らず知らず、くる年もくる年も反芻しつづけているものらしい。そうした所作は死ぬまでいつまでも続いてゆくことだろう。それにしても、人はそんな反芻をまったく無意識につづけながら、なぜかふっと目ざめることがある。わけもなく桑の葉に穴をあけている蚕が、自分の咀嚼するかすかな音に気づいて、不安げに首をもたげてみるようなものだ。そんなとき、蚕はどんな気持がするのだろうか。

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