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2008年11月 8日 (土)

「全国フシギ乗り物ツアー」二村高史・宮田幸治

Zenkoku 二村高史・宮田幸治著
山海社(237p)2005.10
1,470円

本書を手にすると、鉄道マニアもいよいよ行き着くところまで来たか、という感慨を持つ。保存鉄道や時刻表に載っていない乗り物など、不思議というかキワモノっぽい乗り物の全国ガイド本である。評者のような団塊の世代だと、子供の頃、当時残り少なくなってきた蒸気機関車を追っかけて乗りに行ったり、廃車寸前の姿を求めて写真を撮ったりしたもの だ。東武鉄道でいえば杉戸の機関庫にはまだまだ蒸気機関車がゴロゴロしていたのを思い出す。そうした、車両達が姿を消していった時間の流れと同時進行的 に、我々も社会人になり、家庭を持ち、忙しい中で鉄道への興味を薄れさせていったという想いがある。

し かし、鉄道模型を継続している人、海外の鉄道に残っている車両に向かった人、Video(日本でも8mm映画をVideoに起こしたり、特にアメリカでは 鉄道・蒸気機関車のVideo化されているものは多数ある)傾斜していった人など、元鉄道少年たちの鉄道への係わりは多岐に渡り始めたと同時に残念ながら 実物から離れていっている傾向が強いことは否めない。そんな状況にある元鉄道少年達を、本書に紹介された乗り物たちを見に行こう、乗りに行ってみようと思 わせることが著者の狙いなのかもしれない。

17カ所の保存鉄道、17カ所の時刻表にない乗り物、15カ所の時刻表に載っている「ヘンな鉄道」が紹介されている。さすがに知っているところは半数に届 かず、乗ったことのあるところは5カ所という状態なので、評者はもはやマニアという範疇には入らないのであろう。

北海道紋別郡遠軽町丸瀬布、いこいの森公園にある保存鉄道は森林鉄道を復元していて、当時走っていた蒸気機関車が自力走行している唯一の場所とのことである。

「蒸気機関車は、1928年に東京雨宮製作所で製造されたもので、1958年まで地元の丸瀬布・武利意森林鉄道で使用されたものだ。・・・木造の客車は、 岡山の井笠鉄道で走っていたものだ、・・小型のディーゼル機関車は、知る人ぞ知る鶴居村営鉄道の生き残り、・・・さて、いよいよ出発の時刻。ピカピカに磨 かれた雨宮製蒸気機関車に連結されているのは、木曽森林鉄道から来た客車。」

これだけ、日本のナロー鉄道のキーワードを並べられると札幌から車で四時間掛かろうとも行ってみたくなる。

時刻表にない乗り物の中で惹かれたのは、青函トンネル見学用のケーブルカーである。

「青函トンネルを快調に飛ばす特急白鳥、・・・白鳥が少し減速したところ、社内アナウンスが流れる。「まもなく竜飛海底駅です。見学整理券をお持ちのお客 様は出口へお越しください。なお、整理券をお持ちでない方の下車はできませんので、あらかじめご了承ください」・・・ちなみに見学料金は2040円 だ。・・・竜飛海底駅から迷路のようなトンネルを数百メートル歩くと、その斜坑に行き着く。・・・斜坑にある全長778メートルのケーブルカーで約7分か けて、地上の青函トンネル記念館に出る・・・・法律的には、鉄道(鋼索鉄道)なのがおかしい。」

そして、ここも新幹線の工事が始まれば見学も終わりとのこと。いよいよ惹かれること甚だしい。まだまだ鉄道も頑張っている。新しい技術による交通システム も生れてきている状況は頼もしいと思う反面、無骨な機械美を誇示していた鉄道車両は退場を余儀なくされ、スマートな車両・乗り物になっている寂しさは否定 できない。気持ちだけは、飛行機で千歳まで飛び、遠軽・丸瀬布で森林鉄道の立役者たちを見て、札幌に戻り特急白鳥に乗り込み、竜飛でケーブルカーに乗っ て、さてどうやって東京に戻ってくるか。旅程を空想するだけでワクワクするというものだ。(正)

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