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2008年11月 3日 (月)

「昭和天皇の和歌」 田所 泉

Showa 田所 泉著
創樹社 (244p) 1997.12.15
1,890円

 「気持ちを率直に表す」のが、昭和天皇が記者会見の内で答えた作歌の姿勢だというが、ここに収録された269首、まことにわかりやすく、喜怒哀楽が率直に表現されているというのが、著者も含めて大方の印象だろう。

少年時代の念を持ち続けた
構成は序章で動機と方法が語られ、「天」の章、「地」の章、「人」の章、「声調」の章、「心」の章の5章立てで実際の和歌の紹介、解釈、時々の世相がつづられている。付として「『天皇の陰謀』論」(1973)が収められている。

著者は日本新聞協会の卒業生だが、中学時代(戦後直ぐ)に少数派の天皇制護持・国粋派の「右翼」だったという。そんな士が天皇巡行の折に自ら「熱きもの こみ上げて来ぬ」と歌を詠んだが、それは本当のことではなく、その思いがこの著の動機の一因となっている。

いくさとどめえざりし
底本『おほうなばら』には865首が収められている。いくつか指摘がある。当たり前の様ではあるが、昭和天皇の歌には和歌の持つ相聞が無く、また明治天皇のように京都の地を「ふるさと」とすることも無く、「世」や「国」として表れる。

民への思いは率直で、

 

身はいかに なるともいくさ とどめけり
           ただたふれゆく 民をおもいて

とあるが、しかし、

 

戦を とどめえざりし くちおしさ
          ななそぢになる 今もなほおもふ

つまり、とめようとしたがとめることができなかった心情が一方で表現されてもいる。

字余りの歌が多く4割を下回らないこと、また声調の変化がほとんどみられないという指摘も重要で、著者の結論は「身は国民主権の国にありながら、君主の心を保ちつづけた」である。(修)

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