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2008年11月 4日 (火)

「ひべるにあ島紀行」 富岡多恵子

Hiberu 富岡多恵子著
講談社(302p)1997. 09.10
1,785円

スイフト、あの「ガリヴァー旅行記」のスイフトの考証から始まり、それが縦糸となり、ケイと私との旅行記風物語が幻しく横糸につづられる実験的な小説。次第に両者はタペストリーの如く歩み寄り、混交し、時空をこえて人と人の魂、心象風景がそこに広がっていく。「群像」に連作として登場したときから、単行本化が待たれていた書。実際に糸も登場する。島独特の編み物とケルト紋様に打ち込むハンナとの交流だ。途中から西鶴、旧友浪之丞が加わる。

ナバアイ国で望んでいたケイとの別れが実現されるが、その間、物語はその国の習俗や風習、奇妙な公的制約に及び、亡くなった愛犬に擬せられたケイとの葛藤 が綾なしていく。スイフトとステラとの激しい交情に比して、当の本人の男女関係の経験譚は語られず、性の繊細な批評が登場人物の会話の中に例示される。

文献の引用はきわめて大胆で、小説中の進行文としても重要な役割を担っている。どこか隠された何か、あるいは読み手に土足で踏み込まれるのを拒否した筋立ては、例の「少年もの」純文学を裏返しで読まされたような思いがする。(修)

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