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2016年6月

2016年6月12日 (日)

「谷崎潤一郎文学の着物を見る」大野らふ+中村圭子編著

Tanizaki_ohono

大野らふ+中村圭子編著
河出書房新社(160p)2016.03.20
2,052円
谷崎潤一郎を読んだことのある人なら、殊に大正期の初期作品や、己の本性に先祖返りした晩年の作品を読んだことのある人なら、谷崎がどんなにフェティッシュな作家であるかはよくわかっている。

いちばん有名なのは、谷崎が足フェチであることだろう。短編小説「富美子の足」の隠居は「お富美や、後生だからお前の足で、私の額の上を暫くの間踏んで居ておくれ」と富美子に懇願するし、「瘋癲老人日記」の主人公は、元踊り子だった息子の嫁・颯子の足型を取って自分の墓に刻み、嫁の足に踏まれて永眠したいと願っている。颯子のモデルで、谷崎の息子の嫁だった渡辺千萬子と谷崎との往復書簡を読むと、谷崎は実際にそんな願望を千萬子に語っていたのがわかる。

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「ジャズを求めて60年代ニューヨークに留学した医師の話」中村 宏

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中村 宏著
DU BOOKS(320p)2016.04.28
2,700円

サブ・タイトルは「私のJAZZ黄金時代体験記」とある。1933年生まれのジャズ好きな若者が医学部を卒業後、1960年代のニューヨークに留学して学びつつ、ジャズを体感したという経験はこの世代ならばこその貴重なもの。レジデント(専修医)として62年から63年、リサーチ・フェロー(特別研究員)として66年から68年という二度のニューヨーク生活における医学界とジャズに関するトピックスを精緻に表現している。ある日のジャズクラブの出演グループのメンバーと演目がキッチリ書かれ、その感想が几帳面に綴られている。これは「体験記」というよりは「記録」という言い方の方が似合っていると思う。

読み進んでいくと、医師という職業のために真っ当に費やしている時間と努力に加えて、趣味であるジャズに対してとことんのめり込んでいく姿に対して、ジヤズ・ファンといっても一般的なレベルをはるかに超えていることが良く判る。私自身ジャズが好きで高校生の頃から聴いているが、その熱中度というか集中度の違いは明らかだ。ただ、著者がジャズにのめり込み始めた時期のエピソードはそうした違いを超えて親近感が持てるものだ。家庭にSP盤の音楽があり、ラジオからのジャズを聴き、だんだんと、来日したジャズプレーヤーのコンサート等に行くようになる。そうしたステップはジャズを好きになっていく常道だと思うし、家庭環境も重要な要素であるということも事実だ。

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