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2016年10月

2016年10月19日 (水)

「戦争まで」加藤陽子

Sensou_katoh

加藤陽子 著
朝日出版社(480p)2016.08.20
1,836円

加藤陽子が7年前に出した『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の続編である。『それでも……』は、日本近現代史を専門とする加藤が17人の中高生を相手に日清戦争から太平洋戦争までを語った講義録だった。ポイントを衝いた加藤の解説と中高生の生き生きした反応で、大日本帝国が戦争にのめりこんでいく過程が実に分かりやすくおさらいできるようになっていた。

『戦争まで』も同じスタイル。28人の中高生を前に、この国の運命を決めた3つの外交交渉──国際連盟脱退にいたる「リットン報告書」、ドイツ、イタリアと組んだ「三国軍事同盟」、真珠湾攻撃の直前までつづけられた「日米交渉」──と、その失敗を語っている。

『それでも……』もそうだったけれど、この本がいいと思うのは、中高生相手だからといって変にやさしくしゃべったりせず、まずリットン報告書なり同盟交渉の原文(もちろん一部だが)を示して、それを読むことから始めるやり方。一般書ではこうしたものはしばしば要約され、著者による解釈がほどこされることが多いから、読者にとっても原文を読むのは新鮮だ。

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「文学部で読む日本憲法」長谷川 櫂

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長谷川 櫂 著
筑摩書房(167p)2016.08.04
842円

俳人として活躍している長谷川櫂がなぜ憲法を語るのかという、そのギャップ感に後押しされて本書を手にした。帯には「その言葉の奥の時代精神を読み解く」とある。長谷川は俳句に接すると、俳句を生み出した日本文化とは何かといった想いに直面すると言う。限られた字数での表現の中に感情や心象を見つけ出して鑑賞するにはその文化と時代認識が必要であるということだろう。また、日本文化について書かれた名作と言われている谷崎純一郎の「陰翳礼賛」を昭和初期の時代精神を読みとるテキストとしているが、第二次大戦の敗戦を踏まえた時代精神を読み解くための最適なテキストは何かと考えた時、最も相応しいものとして「日本国憲法」を選んだと言っている。

通常、日本国憲法を語ろうとすると、条文の解釈や具体的な運用事例などがその中心になると思うのだが、「日本国憲法を文学部で読む」と言っている本書の趣旨は「法律も文学も言葉で書かれており、その言葉の奥に広がる世界を解明しようとする文学の方法で新たなるものが見えてくるのではないか」という挑戦的なもの。このように「言葉」をキーワードにして、「自分の欲望を行動や言葉で正当化する厄介な人間という動物」と「日本国憲法」の共存をどう図ろうとしているのかを探る旅のようなものだ。

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