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2017年11月

2017年11月22日 (水)

「キトラ・ボックス」 池澤夏樹

Kitora_ikezawa

池澤夏樹 著
KADOKAWA(320p)2017.03.25
1,836円

個人的な読書の傾向でいえばそのほとんどがノンフィクションで、小説やミステリーを読むことはあまりない。著者の池澤に対しては文学者・詩人・小説家といった分野のイメージが強く、最近であれば、河出書房新社の世界文学全集に続いて日本文学全集30巻の個人責任編集を行っているが、そうした統合的・企画的な仕事の印象がある。彼は若い頃にはミステリーの翻訳も手掛けていたようだが、まずは池澤とミステリーという取り合わせに惹かれて本書を手にした。

実は、ミステリーを読むのは疲れるという実感がある。登場人物の数が小説に比べて多いし、その立場や関係をしっかり覚えていなければいけない。また、情景描写や会話表現の中に巧みな形で謎解きのヒントが隠されてることもあって、丁寧に読まないといけないのがなかなかのプレッシャーだ。別の言い方をすれば、ミステリーは読者の勝手な読み方を許容しない。作者の計画通りに結論に到達する必要があるからだ。丁度、何枚もの地図を繋げてチェック・ポイントを確認して目的地に到達するのに似ている。そうした意味では小説とミステリーは根本的な違いが有るのだろう。

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「名誉と恍惚」松浦寿輝

Meiyo_matuura

松浦寿輝 著
新潮社(768p)2017.03.05
5,400円

松浦寿輝という名前は僕の頭のなかで詩人、フランス文学者として登録されていた。パリのエッフェル塔を現代思想っぽく読み解いた『エッフェル塔試論』をぱらぱら読んだこともある。でも、調べてみると小説『花腐し』で芥川賞を受賞したのが2000年。以来、10作近い小説を発表しているから、小説家としてのキャリアも十分に長い。でもその小説に手が出なかったのは、詩人・研究者の書く小説はあまり面白くなさそうという、こちらの勝手な思い込みと偏見による。

書店の棚で、ずいぶん分厚い本だなあと本書を手に取ったとき、帯に筒井康隆が推薦文を書いているのが目に入った。「舞台は子供の頃から憧憬していた魔都・上海。まるで青春時代の古いモノクロの超特作映画を見ているような気分になり、僕はミーハー的な惚れ込み方をしてしまった」

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