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2018年3月

2018年3月19日 (月)

「日本人とリズム感」樋口桂子

Nihonjin_higuchi

樋口桂子 著
青土社(299p)2017.11.24
2,376円

自分自身がリズム感に自信が無いのはともかくとして、リズムが文化論として成り立つのかも想像したことはなかった。所詮、リズムとはノリが良いかどうかであり、「好き」か「嫌いか」という落ち着きどころになってしまう様に思っていたので、リズム感を構造的に語るとはどういうことなのか興味を持って本書を手にした。

著者が日本人のリズム感を考える契機になったエピソードが紹介されているのだが、極めて象徴的で面白い。それは、来日したイタリア人とタクシーに乗った時に、ラジオから流れていた都はるみの「あんこ椿は恋の花」を聞いて「この女の人は腹が痛いのか」と真面目に質問してきたという。喉に無理なく流れるような唱法のベルカントオペラの国の人からすると、喉から絞り出すような都はるみの歌には驚いたようだ。もうひとつは、イタリア語通訳として同乗していた友人とイタリア人との会話で相槌の打ち方の違い。日本人の友人は相槌を打つときに首を下向きに振る。しかし、イタリア人は首を上に上げる。こうした声や相槌といった所作・動作が示す日本人の特性はどこに由来しているのかという疑問から本書は始まっている。

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「コンパス綺譚」グレゴリ青山

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グレゴリ青山 著
龜鳴屋(120p)2017.12.20
2,700円

映画でも小説でも、1930年代の上海を舞台にしているというと、それだけで手が伸びてしまう。最近だと松浦寿輝の『名誉と恍惚』。「魔都・上海」を絵に描いたような、暗い魅力に満ちた小説だった。スピルバーグが映画にもしたJ.G.バラードの『太陽の帝国』は、この時代の上海を少年の目から見ている。映画なら韓国映画『暗殺』やアン・リーの『ラスト・コーション』が、日本軍占領下の上海で日本人や日本への協力者の暗殺をテーマにしていた。時代は少しさかのぼるが、舞台で『上海バンスキング』という名作もある。漫画なら湊谷夢吉の『魔都の群盲』が忘れがたい。

『コンパス綺譚』は1920~30年代の大連、青島、哈爾浜(ハルビン)、上海を舞台にした連作漫画。ひとつの方位磁石(コンパス)を狂言回しに、コンパスを手にした人々の運命を飄々としたタッチで描いてゆく。登場するのはこの地を訪れた日本人と中国人。詩人の安西冬衛、少年時代の三船敏郎、金子光晴と妻の三千代、プロレタリア作家の前田河広一郎、内山書店の内山完造、作家の魯迅と郁達夫、人気女優の阮玲玉、男優で亡命朝鮮人の金焔といった面々だ。

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