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2018年2月21日 (水)

「アメリカ 暴力の世紀」ジョン・ W・.ダワー

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ジョン・ W・.ダワー 著
岩波書店(204p)2017.11.15
1,944円

この一年間、トランプ政権の政策運営を見ていると「アメリカ 暴力の世紀」という本書のタイトルにどうしても今日的な意味を思い浮かべてしまうのだが、本書原文の最終稿は2016年9月で、オバマ政権の最終局面までのアメリカを考察の対象にしていることは確認しておきたい。もっとも、日本語版の「はじめに」の執筆時期は2017年8月ということもあり、トランプ政権に対する著者ダワーの辛辣な評価とともに日本政府の対応についても読み応えのある文章になっている。

本書のタイトルは、ヘンリー・ルースが1941年2月に発表した論評「アメリカの世紀」をもじって「暴力」という形容詞を加えたものだが、1941年といえばアメリカは経済恐慌から脱却し、第二次大戦を前にして経済的や軍事的にも自信にあふれた時代だ。その後、良し悪しは別としてアメリカは対抗できる国が無い状態で存在してきた。その間「パックス・アメリカーナ」といった大袈裟な「言葉」で語られてきたアメリカとは何なのかを、冷戦、ソ連の崩壊、湾岸戦争、9.11といった事件と時代を継続・関連した事象として詳細に分析している。その手法は国防総省、CIA、軍の現場、政府の広範な資料やデータの引用で徹底して裏付けられており巻末の引用リストも圧巻である。

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2016年1月21日 (木)

「雨の匂いのする夜に」椎名 誠

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椎名 誠 著
朝日新聞出版(224p)2015.11.20
2,268円

椎名誠といえば、旅や食に関するエッセイがまず思い浮かぶ。それほど行動派作家としてのイメージが強いこともあり、「雨の匂いのする夜に」というタイトルを目にしたときに、その詩的な感覚と椎名とが結びつかなかった。「基本的に小説を書いて小説類の単行本が多いモノカキ人生だが、この『写真と文章』でつづる本書のようなものが作れるのがぼくには一番嬉しい」と語っているように、基本は「作家が旅をしている」という意識は強く持ちつつも、幅広い表現活動を楽しんでいる様子が見て取れる。日本国内に止まらず世界各国を歩き、そこに住む人々と語り合う時間を大切にしているということだろう。

本書は「アサヒカメラ」に連載されて来た「シーナの写真日記」というコラムで、コンパクトな文章とモノクロームの写真3枚をセットにして各地の旅を日記風にまとめたもの。2009年から2012年に掲載されたもののうち、日本の20ヶ所、アジアの9ヶ所、南米その他13ヶ所の旅が本書では選ばれている。カメラ雑誌として伝統的な「アサヒカメラ」の中でこの「シーナの写真日記」が一番長い連載と聞き、それはそれとして驚くべきことであるが、「旅に出たおりに、ふいに出合ったココロに迫る風景や、自分の記憶能力が殆んどないので写真に記憶を頼むような気持でシャッターを切って来た」との言葉からも判るように、写真が主体の旅行ではないので、事前に被写体や風景を想定していない。たぶん、歩みを止めて写真を撮ることはあっても、来た道を戻って写真をとることは無いと想像する。その意味では、まさに偶然に近い、一期一会の写真が載せられているということだろう。

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2012年3月 8日 (木)

「@Fukushima」高田昌幸編、「裸のフクシマ」たくきよしみつ

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「@Fukushima」
高田昌幸 編
産学社(456p)2011.12.31
1,785円

「裸のフクシマ」
たくきよしみつ 著
講談社(352p)2011.10.15
1,680円

福島第一原発の事故は「この国のかたち」を変えてしまう出来事、いや、変えたくない人もいるようだから、変えなければいけない文明史的な出来事だった。だから直後から事故に関して、あるいはどんな新しい「かたち」を目指すかについて、たくさんの本が出版された。そのうちの何冊かを読んでbook-naviで紹介したけれど、多くは専門家や社会科学系の研究者の手になるものだった。それぞれに刺激を受け説得力のあるものだったが、もっと生の福島の声も聞いてみたい。

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2011年6月 8日 (水)

「秋葉原事件」中島岳志、「ホームレス歌人のいた冬」三山 喬

Akiba中島岳志 著
朝日新聞出版(240p)2011.03.30
1,470円



Home三山 喬 著
東海大学出版会(272p)2011.03.23
1,890円

リーマン・ショックが世界中を駆け巡った2008年は、この国にとっても大きな転換点だったと言えるのではないだろうか。バブル崩壊から20年近く、以来、不況と低成長にあえいできた日本にリーマン・ショックが与えた影響は大きく、戦後冷戦構造のなかで覇権国・アメリカに随伴して成長してきたこの国の繁栄が終わったこと、今後、大きく成長することはなく長期的な縮小サイクルの過程に入ったことがはっきりした。「3.11」は、この国のそんな行く末をさらにダメ押しして、誰の目にも明らかにしてみせた。

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2011年1月11日 (火)

「アメリカン・デモクラシーの逆説」渡辺 靖

American

渡辺 靖 著
岩波新書(232p)2010.10.20
798円

4年前、アメリカに1年間滞在することを決めたとき、自分が住むことになる国を知るためにアメリカに関する本を10冊ほど読んだことがある。そのなかで、古典ではディケンズの『アメリカ紀行』や永井荷風の『あめりか物語』、新しいところでは高祖岩三郎『ニューヨーク烈伝』や小林由美『超・格差社会 アメリカの真実』なんかが自分の関心に引き寄せてすごく役に立った。そんなふうにアメリカ理解を深めてくれた何冊かの本のなかに、この本の著者である渡辺靖の『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会)もあった。

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2010年11月10日 (水)

「アフロ・ディズニー」「アフロ・ディズニー2」菊地成孔・大谷能生

Afuro

菊地成孔・大谷能生 著
文藝春秋
「アフロ・ディズニー」(280p)2009.8.30 
1,500円
「アフロ・ディズニー2」(368p)2010.9.15 
1,575円

菊地成孔といえば、菊地成孔ダブ・セクステット、ペペ・トルメント・アスカラールという二つのバンドを率いるミュージシャン。ダブ・セクステットはミキシング技術者もメンバーに入ったジャズ・グループで、現代的なマイルス・ディビス・バンドみたいな音を出す。ペペ・トルメント・アスカラールはブラック・ミュージックにサルサやタンゴ、クラシックや現代音楽までミックスさせてジャンルを超越した音楽を聴かせてくれる。どちらも聴く者を興奮させるバンドで、僕がいま気に入っているミュージシャンの一人だ。

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2010年9月13日 (月)

「あんじゅう」宮部みゆき

Anju

宮部みゆき 著
中央公論新社(563p)2010.07
1,890円

「三島屋変調百物語事続」と副題にあるように、2年前の「おそろしや」の続編だ。それにしても宮部の筆力の圧倒的な強さは何に由来しているのだろうかと思う。ジャンルの多様さだけでなく、そのボリュームも確かな実力に裏打ちされていることは十分承知しているものの、いつかその才能が枯渇するのではないかと心配するほどである。本書は、江戸は神田で袋物・小物を商う三島屋という商家を舞台としている。店の主人伊兵衛が世の中の変わった話を集めることを思い立ち、数えで18歳となった姪っ子「おちか」をその話の聞き手にするという筋立て。「聞いて聞き捨て、語って語り捨て」が話を集めるに際しての決まりごとになっているので、聞いたことを外で語ることもなければ、語るほうも何かを期待するわけではない。

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「アクターズ・スタジオ・インタビュー」ジェイムズ・リプトン

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ジェイムズ・リプトン 著
早川書房(624p)2010.06.25
3,990円

アクターズ・スタジオといえば、アメリカ映画・演劇の俳優や演出家を養成する機関としてあまりにも有名だ。ジェイムズ・リプトンはこのスタジオの共同所長であり、俳優、脚本家、演出家、作家としても活躍してきた。1994年、リプトンは学生教育の一環として、彼自身がインタビュアーになり俳優や映画監督を招いて学生の前で話をしてもらうプログラムを始めた。これが「アクターズ・スタジオ・インタビュー」で、ケーブルTVで放映されたことによって全米の人気番組になった。

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2009年7月 9日 (木)

「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」ジョー・マーチャント

Kodai_2 ジョー・マーチャント著/木村博江訳
文藝春秋288p2009.05.14
1,995円

 

私は機械が好きだ。蒸気機関車や発電機といった鋼の機能もさることながら歯車・ナット・バネといったパーツの細密感もかなり惹かれる本書を開いて最初の写真はそうした嗜好には極めて刺激的であった。写っているのは古代ギリシアで難破沈没した船から偶然引き上げられた物体で緑青に完全に覆われつつも歯車や円板のようなものが密度高く集積されているその精密な加工レベルそれが紀元前一世紀の製作物であるという事実に大きなギャップを感じ戸惑いさえ覚える本書はそのブロンズ道具いかなる構造で何のために作られたのかを推理し再現してきた多くの科学者の挑戦の記録である。

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2009年5月 7日 (木)

「『穴』を探る」草森紳一

Anao 草森紳一著
河出書房新社(
216p2009.2.28
2,100 

草森紳一という名前は、僕のなかでは「百科全書派」という言葉と結びついている。「百科全書派」は18世紀フランスで森羅万象を科学的に記述した「百科全書」のディドロやダランベール一派を指す。それがなぜ草森と結びついたかといえば、彼がエッセーの対象としたのが専門の中国文学だけでなく、ビートルズやポップアート、マンガ、荷風をはじめとする日本文学、古典から現代までの外国文学、広告、写真、デザイン、ファッション、書道に散歩と、ジャンルからジャンルを横断してとどまるところを知らないからだ。

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