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駅格差/NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか/映画術/絵筆のナショナリズム/円朝の女/エ/ン/ジ/ン/永仁の壷/江戸の判じ絵/映画監督 深作欣二

2017年7月21日 (金)

「駅格差」首都圏鉄道路線研究会

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首都圏鉄道路線研究会 著
SBクリエイティブ(256p)2017.05.08
886円

著者の首都圏鉄道路線研究会は「各種統計データを駆使して鉄道がもたらす様々な効果効用を日夜研究している」と紹介されている。会員6名で執筆しているのだが、鉄道好きという共通項で統一感のある一冊になっている。このグループは昨年「沿線格差」を出版しており、本書は続編という事になる。前書同様、「格差」という言葉をタイトルに使っているのだが、「時代の新しい流れ」を示しつつ駅ごとの特色・特性をより鮮明に比較するためにこの言葉を選んだと考えるのが妥当なようだ。

同時に「駅格差」としながらも物理的な駅舎や構内を単純に比較している訳ではなく、「駅」と「街」の混在した空間を対象としたランキングである。それは私たちが普段生活をしている中で使っている生活空間としての「駅」という言葉の概念に近いものであり、こう説明している。

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2015年12月19日 (土)

「NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか」上村達男

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上村達男 著
東洋経済新報社(324p)2015.10.23
1,620円

著者の上村達男は2012年の3月から2015年の2月までの3年間NHKの経営委員であり、経営委員長代行を務めた。この間のNHKにまつわる報道は、一般視聴者としても驚きと不可解さの連続であった。その結果とはいえ、国民に放送法の基本やNHKの仕組みといったものに目を向かせる契機となったのは皮肉なことであった。「NHKはなぜ反知性主義に乗っ取られたのか」という本書の直截なタイトルは上村の自己反省を含めたさまざまな思いがストレートに込められていると思う。

歴代のNHK会長、そして経営委員長の人となりを語りつつ、籾井勝人がNHK会長に任命されてから上村が経営委員を退任するまでの一年間をNHKの経営体の内部における経験を語ることで、問題を掘り下げている。籾井と上村の会話を読んで見ると、それはせめぎ合いと言ったレベルのものではなく、まるで子供の喧嘩に近いすれ違い方である。上村が法学者としての冷静さを保ちつつ記述しているものの、書かずにはいられなかったと言う沸き上がる感情も十分伝わってくるものになっている。タイトルに使われている「反知性主義」という言葉も評者にとってはあまり馴染みのある言葉ではなかったこともあり、上村による定義を知りたかった。

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2014年6月15日 (日)

「映画術」塩田明彦

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塩田明彦 著
イーストプレス(256p)2014.01.16
2,484円

目次を見るとこんなキーワードが並んでいる。「動線」「顔」「視線と表情」「動き」「古典ハリウッド映画」「音楽」。著者の塩田明彦は『どろろ』『抱きしめたい』などの作品をもつ映画監督で、本書は映画美学校アクターズ・コースで彼がおこなった講義を活字化したものだ。役者志望の学生を前に、現役ばりばりの映画監督が自らの手の内を晒す。この本の面白さはそこに尽きる。

塩田はこの講義のテーマについて、「演技と演出の出会う場所から映画を再考する」と書いている。毎回、数本の映画を取り上げ、気になる部分を上映しながら映像に即して語るスタイル。紙面でも多くの連続カットが印刷され、講義を体感できるようになっている。例えば、最初に語られているのは動線。

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2011年10月11日 (火)

「絵筆のナショナリズム」柴崎信三

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柴崎信三 著
幻戯書房(236p)2011.07.30
2,940円

サブタイトルに「フジタと大観の<戦争>」とある。フジタとは藤田嗣治、大観とは横山大観のこと。近代日本の洋画と日本画を代表する画家が、どんなふうに戦争にかかわり、何を描いたのか、がこの本のテーマだ。第二次世界大戦は、単に敵対する国の軍隊と軍隊同士が戦っただけでなく、政治経済・科学技術・思想文化のあらゆる分野を動員し、「銃後」のすべての国民を巻き込んだ総力戦だったと言われる。絵画の世界も例外ではない。「彩管報国」(さいかんほうこく。彩管とは絵筆のこと)のスローガンの下、画家たちも国家の戦争プロパガンダに狩り出され、また自ら進んで絵筆を取った。

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2010年1月 6日 (水)

「円朝の女」松井今朝子

Entyou松井今朝子 著
文芸春秋(227p)2009.11.12
1,500円

松井今朝子というと歌舞伎の脚本を書いていたり、武智歌舞伎に関わっていたりと、歌舞伎畑の人だという知識しか無かったので、円朝に関する本書を手にしたときには少し驚いた。それにしても、円朝、この稀代の名人に関する本は過去から夥しい数が刊行されているのだろう。直接見聞き出来ないその芸がこれほど大きな影響を与え続ける理由は何なのかと考えてしまう。円朝の凄さはいろいろな側面から語られている。例えば、真打になったのが17歳というとてつもない若さだった、「真景累ヶ淵」や「怪談牡丹灯籠」などの名作を自ら書いた、円朝作の「塩原多助一代記」は修身の教科書に採用された、井上馨や山岡鉄舟、福沢諭吉など当時の一流人の懇意を受けた、明治天皇に御前落語を行った、等など。そうした、華麗なる伝説に彩られた円朝を材料に松井今朝子がどう料理したかというと、歌舞伎に対する造詣を生かしつつ、円朝が生きた天保10年(1839年)から明治33年(1900年)という時代を丁寧に描いている。

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2009年6月10日 (水)

「エ/ン/ジ/ン」中島京子

Engin_2 中島京子著
角川書店
256p2009.02.28
1,890円

「エ///ン」というタイトル何やら不気味な感覚が漂う。「エンジン=発動機」「エンジン=猿人」「エンジン=円陣」、どうも全て違っていて「エンジン=厭人(人嫌い)」ということらしい。「団塊の世代にとっては当事者として楽しめますよ」という、とある人の薦めに従っての読書この小説は主人公(葛見隆一)のところに突然、幼稚園の同窓会の知らせが届くところから始まる。葛見は時間つぶしとばかりに通知の場所に行ってみると会場として指定されたスナック待っていたのは、幼稚園の責任者兼たった一人の先生だった倉橋礼子の娘というミライという名の女性そして、同窓会に出席したは葛見だけだった

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2008年11月 6日 (木)

「永仁の壷」 村松友視

Einin 村松友視著
新潮社(317p)2004.10.24

1,785円

1960年(昭和35年)に発覚した「永仁の壷」贋作騒動は国民的事件として報道されたが、時とともに語られることも少なくなってきた。当事者だった加藤唐九郎も小山富士夫も物故して、事実を語るべき人が居なくなってしまったのも理由のひとつだろう。一方、この事件は語りつくされたとも思えない。「永仁の壷」と題されたこの本を手にしたとき、久しぶりに、この事件を村松がどう捉えようとしているのか興味を持った。

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「江戸の判じ絵」 岩崎均史

Edo 岩崎均史著
小学館(143P)2004.04

2,520円

ヨーロッパ人から日本人は ユーモアのセンスがないかのように言われることがある。英国人の辛らつなユーモアにはこちらもついていけないのだが、落語を説明しても文化の違いからか 「金毘羅参り」のような言葉遊び的なおちでは分からせるのは容易でない。東西共通のユーモア小噺のテーマは「男・女」「金」「食べ物」といったところだろう。

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2008年11月 5日 (水)

「映画監督 深作欣二」 深作欣二・山根貞男

Eiga 深作欣二・山根貞男著
ワイズ出版(528p)2003.07.12

4,410円

「時 代と寝る」という表現がある。小説にしろ、映画や音楽にしろ、その作り手の個性や個人的な必然性と、時代が求めているものとがドンピシャリ出会った稀な作 品。時代を象徴するというより、時代を予感し、その無意識をいちはやく血肉化したつくり手とその作品にこそ、「寝る」という露骨にセックスを指ししめす言 い方がふさわしい。僕の体感でいえば、1972年の「現代やくざ 人斬り与太」から、5本の「仁義なき戦い」をはさんで1975年の「仁義の墓場」まで、深作欣二は間違いなく70年代という「時代と寝ていた」。

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