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ザ・カルテル(上下)/3.11 震災は日本を変えたのか/されどスウィング/さらさらさん/残夢整理 – 昭和の青春/さよなら渓谷/ザ・ペニンシュラ・クエスチョン  朝鮮半島第二次核危機/サラーム・パックス/さびしいまる、くるしいまる。/さらば闇の馬券師

2016年7月19日 (火)

「ザ・カルテル(上下)」ドン・ウィンズロウ

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ドン・ウィンズロウ 著
角川文庫(上636p、下594p)2016.04.23
各1,296円
ドン・ウィンズロウの『犬の力』(2009)は、アメリカとメキシコを舞台に数十年にわたる麻薬戦争を描いた傑作ミステリーだった。米国麻薬取締局(DEA)捜査官とメキシコ麻薬カルテルのボスが宿命的に対決する物語の圧倒的な面白さで、確かその年のミステリー・ランキングで1位を総なめしたはずだ。『ザ・カルテル』はその続編に当たる。

冒頭に「本書を次の人々に捧げる」として、131人もの人々の名前が4ページにわたって挙げられている。著者は、「(131人は)本書の物語が展開する時代に、メキシコで殺されたり“消え”たりしたジャーナリストの一部である」と述べ、こうつけくわえている。「本書はフィクションである。しかし、メキシコの“麻薬戦争”に詳しい人なら誰でも、本文中の出来事が実際の出来事から着想を得ていることに気づくだろう。わたしは数多くのジャーナリストの作品を参考にした」

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2016年4月19日 (火)

「3.11 震災は日本を変えたのか」 リチャード・J・サミュエルズ

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リチャード・J・サミュエルズ著
英治出版(432p)2016.03.08
3,024円

3.11から5年が経った。その間、多くの刊行物や報道が多様な視点でこの災害を表現し、論じてきた。3.11に係わる本をそれなりに読んで来たつもりではあるが、外国の研究者によるものは初めてだと思う。著者は1951年生まれ、MIT( Massachusetts Institute of Technology)政治学部教授、MIT国際研究センター所長で日本の政治経済と安全保障政策を専門としている所謂知日派である。原書はコーネル大学出版局から「3.11 Disaster and Change in Japan」と題して出版されたもので、「3.11」の結果として、日本の何が変わって、何が変わらなかったのかという視点から、国家安全保障、エネルギー政策、地方自治といった三つの観点を掘り下げている。

本書を読むに際していくつかのポイントがあると思うのだが、その一つが、原書は2013年4月に出版され、3.11発生からの2年間を俯瞰したものであること。つまり現在から見ると直近の3年間の状況は反映されていないということである。政治的に言えば菅直人・野田佳彦という二人の総理大臣の民主党政権の時代である。二点目は著者が日本の政治経済と安全保障政策の専門家として日本国内外の幅広い情報チャネルや文献を駆使して実証しており、これによって新しい視点との出会いが期待されること。三点目は、1854年の安政の大地震をはじめ、関東大震災、阪神淡路大震災など、過去日本で発生した自然災害への対応事例を詳細に分析しており、3.11以前からの著者の日本研究の成果が発揮されている。

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2015年9月22日 (火)

「されどスウィング」相倉久人

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相倉久人 著
青土社(256p)2015.07.25
2,376円

相倉久人が「ジャズは死んだ」と宣言してジャズ評論から撤退したのは1971年のことだった。ジャズ喫茶に通いはしたが、ときどきライブハウスをのぞく程度のジャズ・ファンにすぎなかった僕は、このときの相倉の文章をきちんと読んでいない。でも今から考えると、この「死んだ」という言葉には二つの意味が込められていたように思う。

ひとつは相倉久人が自ら語っているように、「これこそジャズだ」と信じた音楽が死んだということ。象徴的に言えば、1967年にジョン・コルトレーンが亡くなったとき、ジャズは死んだという認識。1940年代のビ・バップ、50年代のハードバップと発展してきたジャズの主流は、60年代になって二つの方向に分解した。ひとつはコルトレーンを代表とする前衛ジャズ。もうひとつは、エレクトリック・サウンドのジャズからフュージョンへという流れ。

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2013年4月20日 (土)

「さらさらさん」大野更紗

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大野更紗 著
ポプラ社(360p)2013.03.13
1,470円

著者は25歳で「筋膜炎脂肪織炎症候群」という難病を発症し、退院したもののステロイドをはじめ30数種のくすりを服用しつつ、室内での安静状態を余儀なくされていながら親と同居することなく一人暮らしをしている女性。1984年生まれ、2008年に上智大学外国語学科フランス語科を卒業後、ビルマ難民支援や民主化運動に関心を抱いて大学院に進学。ビルマでのフィールドワークの最中に発症した。本書は著者にとって二作目の本であり、評者は一作目も読んでいなかったので、この際とばかり、「さらさらさん」と一作目の「困ってるひと」をまとめて読んでみた。

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2010年8月13日 (金)

「残夢整理 – 昭和の青春」多田富雄

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多田富雄 著
新潮社(228p)2010.06
1,680円

多田富雄は1934年生まれ、東大医学部教授から東京理科大の生命科学研究所所長などを歴任。免疫学の泰斗であるとともに、俳句・能にも造詣が深く、自ら新作能も多く書き下ろしているという多能の人。今年の4月に前立腺がんで死去、享年76歳であった。この10年間は脳梗塞から声を失い、右半身不随となったものの、「新潮」2009年新年号から2010年3月号が本書の初出であることからも判るように、病後も精力的に執筆活動を続けてきた。病の中で著者がその生涯を振り返って思い出深い6名の人物、5名の故人と1名の消息不明者についての回想であり、完結していない気持ちを自分なりに片付けようとして綴るまさに「残夢整理」である。上手いタイトルをつけるものである。

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2008年11月12日 (水)

「さよなら渓谷」 吉田修一

Sayonara 吉田修一著
新潮社(208p)2008.06.20

1,470円

私ごとから始めるのをお許しいただきたい。小生、1年ほどニューヨークに滞在していた。8月中旬に帰国して1カ月。まだ日本の日常に復帰しきれていない。 電車に乗っても町を歩いていても、ニューヨークと違ってやけにきれいで清潔で静かで、なんだかアメリカからまた別の国に来たみたいで、自分が半世紀以上も 暮らして慣れ親しんだ国に戻ったという実感がない。それと関係あるのかどうか、1年ぶりにこのレビューを書こうと新刊を読みはじめたけれど、2冊試みて2冊とも最後まで読み通せずに放り投げてしまった。どちらも興味あって買った本なんだけど、身体のどこかが醒めていて忍耐がきかない。

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2008年11月10日 (月)

「ザ・ペニンシュラ・クエスチョン  朝鮮半島第二次核危機」船橋洋一

Penin 船橋洋一著
朝日新聞社(752p)2006.10.30

2,625円

北朝鮮が弾道ミサイル発射につづいて核実験をおこない、米朝中露韓日による六者協議が進行しているまっただなかに出版された「朝鮮半島第二次核危機の現在史」である。本の厚さ4センチ、752ページがずっしり重い。名前を挙げられているだけでも160人の当事者に取材した超重量級のノンフィクションだ。

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2008年11月 5日 (水)

「サラーム・パックス」 サラーム・パックス

Salam サラーム・パックス著
ソニー・マガジンズ(408p)2003.12.27

1,680円

サブタイトルには「バグダッドからの日記」とある。書名であり筆者名でもある「サラーム」「パックス」は、それぞれアラビア語とラテン語で「平和」。これは、インターネットのブログ(個人の日記サイト)上に29歳のイラク青年が書いている日記を翻訳したものだ。翻訳されたのは、アメリカがイラクに戦争をしかける半年前の2002年9月から、フセイン政権が倒れて3カ月後の2003年6月まで。英語で書かれた日 記は戦争が近づくとともに知られるようになり、世界中からアクセスが殺到した。最初の日(9月7日)は、こんなふうに書き出されている。

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2008年11月 4日 (火)

「さびしいまる、くるしいまる。」 中村うさぎ

Sabisii 中村うさぎ著
角川書店(256p)2002.11.30

1,575円

1960年代の後半、大学生だった僕がビートルズを好きになったのは「サージャント・ペパー」から、いわゆる後期ビートルズからだった。それ以前のビートルズはただのアイドルとしか思えず、キャーキャー騒ぐ女の子たちをバカにしていた。でも、好きになってよく聴いてみると、例えば初期のアルバム「ハード・デイズ・ナイト」など、たとえようもなく美しく、胸にじんとくる。実は女の子たちのほうが、よくわかっていたんだと恥ずかしかった。

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2008年11月 3日 (月)

「さらば闇の馬券師」 冬木哲哉

Yamino 冬木哲哉著
双葉社(306p)1998.05.25
1,470円

デキレースを造ったのは俺
これは小説ではなく、事件当時に知れれば間違いなく塀の内におちた人の実録である。作者は文中でも実名で登場する。南関東公営競馬を舞台にノミ屋〈私設 馬券屋・JRA正規窓口で買わずに呑んでしまう組織、もちろん違法でお縄頂戴となる)にも手を出す単なる競馬好きが昂じて内輪の人と交わるようになり、最 初は持ちかけられ、ついには積極的に八百長競馬演出に乗り出したダンベイ(旦那・出金者)の懺悔噺(ざんげばなし)である。

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