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世界まるごとギョーザの旅/セカンドハンドの時代/戦争まで/戦艦大和ノ最期/絶筆/戦後入門/セロニアス・モンクのいた風景/千本組始末記/拙者は食えん! /戦後腹ぺこ時代のシャッター音/『世界地図』の誕生/全国フシギ乗り物ツアー/戦略の本質/世界のすべての七月/戦争が遺したもの/青春の終焉

2017年6月23日 (金)

「世界まるごとギョーザの旅」 久保えーじ

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久保えーじ 著
東海教育研究所(252p)2017.02.21
1,944円

著者は世界50ヶ国以上を旅して、現地で出会った食べ物を日本で再現している人だ。奥さんは調理師という能力を生かしつつ、夫婦が追いつづけたテーマの一つが「ギョーザ」である。中国人が日本でギョウザを焼くことにカルチャーショックを受けたというエピソードに象徴されるように、今となっては、焼き餃子はれっきとした日本のソウルフードになったと言って良いだろう。

それは、文化の伝播の常として受容のプロセスの過程で多様な変化が発生し、そこに新しいものが生まれるのは必然という証左でもある。その結果、長い歴史を持ちながらも世界各国にギョウザの仲間が存在し続けていることは「ギョーザ」の持つ魅力であることを教えてくれる努力の一冊になっている。

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2017年3月18日 (土)

「セカンドハンドの時代」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

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スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 著
岩波書店(630p)2016.09.29
2,916円

1991年12月、ソビエト連邦が消滅した。その1年半前、わずか10日間だがモスクワとサンクト・ペテルブルクを一人で旅したことがある。すでにベルリンの壁は崩壊し、東欧の共産主義国家が次々に倒れていた。ゴルバチョフのもとでペレストロイカとグラスノスチが進行していたがモノ不足からインフレが進行し、経済の混乱は目を覆うばかりだった。日々そんな報道に接して、国が壊れるというのはどういうことかと、野次馬的な興味から「物見遊山」の旅だった。

夜遅くモスクワの空港に着いて、市内のホテルにチェックインした。空腹だったのでホテルのレストランに行くと、サラダしかできないという。仕方なくパンとサラダを頼むと、固いパンにぶつぎりのキュウリとキャベツが出てきて、ドレッシングもかかっていなかった。市内のレストランに入ると、メニューは国民向けにルーブル、外国人にはドル建てと二重の価格が書かれていた。ルーブルより1ドル札が通貨として通用していた。アメリカたばこが通貨代わりに喜ばれると聞いて持っていったが事態の変化は早く、もう誰も喜んではくれなかった。

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2016年10月19日 (水)

「戦争まで」加藤陽子

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加藤陽子 著
朝日出版社(480p)2016.08.20
1,836円

加藤陽子が7年前に出した『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の続編である。『それでも……』は、日本近現代史を専門とする加藤が17人の中高生を相手に日清戦争から太平洋戦争までを語った講義録だった。ポイントを衝いた加藤の解説と中高生の生き生きした反応で、大日本帝国が戦争にのめりこんでいく過程が実に分かりやすくおさらいできるようになっていた。

『戦争まで』も同じスタイル。28人の中高生を前に、この国の運命を決めた3つの外交交渉──国際連盟脱退にいたる「リットン報告書」、ドイツ、イタリアと組んだ「三国軍事同盟」、真珠湾攻撃の直前までつづけられた「日米交渉」──と、その失敗を語っている。

『それでも……』もそうだったけれど、この本がいいと思うのは、中高生相手だからといって変にやさしくしゃべったりせず、まずリットン報告書なり同盟交渉の原文(もちろん一部だが)を示して、それを読むことから始めるやり方。一般書ではこうしたものはしばしば要約され、著者による解釈がほどこされることが多いから、読者にとっても原文を読むのは新鮮だ。

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2016年8月22日 (月)

「戦艦大和ノ最期」吉田 満

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吉田 満 著
講談社(224p)2016.07.09
1,080円

講談社文芸文庫ワイドとして「戦艦大和ノ最期」が2016年7月8日に発行された。「戦艦大和ノ最期」の初版は1952年(昭和27年)に創元社から発行され、その後、決定稿とされた北洋社版が1974年(昭和49年)4月に出版、同年11月にはこの「戦艦大和ノ最期」と「提督伊藤整一の生涯」など、吉田満の4編の作品をまとめた「鎮魂戦艦大和」が講談社から出版されている。今回とりあげる、講談社文庫本ワイドにはこの決定稿「戦艦大和ノ最期」が収められているのに加えて、三つの版の各々に書かれた吉田の「あとがき」、創元社版に載せられた、河上徹太郎、小林秀雄、林房雄、三島由紀夫、吉川英治の「跋文」、講談社版の、江藤淳の「序文」、鶴見俊輔の「解説 戦艦大和ノ最期」、古山富士雄の「作家案内 吉田満」が収められている。

こうした、あとがき、跋文、解説などを発行された時代とともに読むと、文章を書いた人々の戦争体験が当然色濃く反映されているとともに、各版の時代(昭和27年と昭和49年)の社会状況も映されていることが判る。それは読み手である私自身にもいえることで、自分がどんな状況でその本を読んだかで受け止め方も当然異なってくる。私は「戦艦大和ノ最期」を過去二回読んでいる。一度目は父の書架にあった創元社版の「戦艦大和ノ最期」を中学生のときに手にした。

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2016年2月19日 (金)

「絶筆」野坂昭如

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野坂昭如 著
新潮社(379p)2016.01.22
1,728円

野坂昭如は2015年12月9日に85才の生涯を閉じた。それに先立つ2003年5月に脳梗塞を発症したものの、陽子夫人の手を借り口述筆記によって文章を発表し続けていた。本書も2004年から雑誌「新潮」や「新潮45」に掲載されていた日記形式のコラムをまとめたものである。タイトル「絶筆」とあるように最期のコラムは死亡当日のもので死の数時間前の口述と書かれている。

十年を超える、リハビリの中の記録だけに、毎日の食事や日常生活描写が多くなっているのは当然として、以前からの趣味であるラグビーや相撲といったスポーツ、過去の戦争の記憶、政治状況に対する思いなどが広範囲に綴られていて、その旺盛な好奇心や過去の記憶も衰えることのない姿は野坂の強さを表していると言える。加えて、第二次大戦に関する記憶に基づく戦争への警鐘が常に底流としてあるが、一方、「思い出」として穏やかに語られる部分もある。

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2015年12月19日 (土)

「戦後入門」加藤典洋

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加藤典洋 著
ちくま新書(640p)2015.10.10
1,512円

結論を先に言ってしまおう。本書が提案しているのは日本国憲法第9条の改正である。

加藤典洋が私案としてここで提示しているのは、第1項の戦争放棄はそのままに、第2項をおおよそ次のように変えようということだ。

・自衛隊を国連待機軍と国土防衛隊に分離する。国連待機軍は国連の直接指揮下で平和回復運動に参加する。
・国土防衛隊は国土への侵略に対し防衛に当たる。これは国民の自衛権発動であり、従って国土防衛隊の治安出動は禁じられる。
・核兵器は作らず、持たず、持ち込ませず、使用しない。
・外国の軍事基地は認めない。

集団的自衛権を認める方向で憲法改正を目論んでいる人達からは、なんと非現実的なという声が聞こえてきそうだ。一方で護憲派からも、こうした「新9条論」が「安倍政権の動きを裏側から支えてしまう可能性」(杉田敦、朝日新聞2015年11月29日)が指摘される。でも600ページを超える「受験参考書みたいな」本書を読んで最後にこの提案に接したとき、深く考えこまざるをえなかった。

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2014年11月16日 (日)

「セロニアス・モンクのいた風景」村上春樹

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村上春樹 編・訳
新潮社(303p)2014.09.26
2,160円

著者のジャズへの傾倒ぶりは良く知られてはいるが、ジャズに関する文章から感じられる村上春樹は作家村上春樹とはまた一つ違った印象を受ける。彼が作家である以前にジャズ好きが文字を紡いでいるという感覚が強いのだ。本書はそんな村上が、稀代のジャズ・ピアニストであったセロニアス・モンクについて自身の文章とともに、ジャズ評論家のレオナード・フェザー、ナット・ヘントフ、ドイツのジャズ評論家のトマス・フィッタリング、またジャズ・プレイヤー達等13人の書いたセロニアス・モンクに関する自伝や評論などから選択してきたもの。そこには多様な視点があり、モンクの音楽や生活を表現されている。

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2014年1月15日 (水)

「千本組始末記」柏木隆法

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柏木隆法 著
平凡社(528p)2013.10.23
3,990円

映画は19世紀末に発明されて以来、見世物として世界中の小屋や劇場で上映されてきた。日本でもパリやニューヨークとほぼ同時に神戸や京都で上映されている。映画は娯楽や芸術であると同時に最初から産業であり、興行でもあった。そしてこの国の場合、興行はやくざと切っても切れない縁を持つ。特に草創期の映画界では、やくざの人脈はロケの警護といった力の行使だけでなく、製作会社本体に資金提供者やプロデューサー、あるいはスタッフとして入りこんでいた。

この本の主人公・笹井末三郎は京都のやくざ千本組に生まれ、青年期にアナキストとなった。末三郎の周辺にはアナキストとやくざが入り乱れ、東京と並ぶ映画産業の地、京都の映画製作現場にかかわってゆく。本書はそんな草創期日本映画の隠れた歴史を綿密な取材で明らかにしている。これを読むと、アナキストとやくざが絡んでつくられた日本映画の系譜は、僕らが若い頃見た東映やくざ映画にまで遥かにこだましているように見える。面白い本だった。

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2011年6月 8日 (水)

「拙者は食えん! 」熊田忠雄

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熊田忠雄 著
新潮社(234p)2011.04.18
1,575円

東京は世界中の料理を食べることが出来る世界で唯一と言って良い都市である。加えて、中華料理をとってみても北京料理・広東料理・上海料理・四川料理、はたまた湖南料理といった地方毎にレストランが細分化されている。しかし東京がいくら大都会といっても母国出身の客だけで各国料理レストランの経営が成り立っている訳ではない。日本人が世界各国の食べ物を楽しんでいるということだ。食材、調理の仕方、味付けなど千差万別な料理を日々の食生活に取り込んでいるわたしたちの味覚のグローバル化ともいうべき状態はいつごろから始まったのだろうか。

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2008年11月12日 (水)

「戦後腹ぺこ時代のシャッター音」赤瀬川原平

Sengo 赤瀬川原平著
岩波書店(215p)2007.09

1,680 円

岩 波写真文庫は1950年に創刊され、約8年間で286冊が刊行された。その中から24冊を選び「岩波写真文庫再訪」という副題を持つ本書が出た。この24 冊を題材として当時の日本を語るというか、当時の赤瀬川自身を語るというのが本書の内容である。同時に10冊の岩波写真文庫が復刻版として岩波から出てい る。岩波書店もなかなか商売上手なところを見せている。1950年というと第二次大戦後5年間が経過しているのだが、その時代と写真との関係をこう表現している。

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