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属国民主主義論/それでも三月は、また/そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所/葬祭の日本史

2016年8月22日 (月)

「属国民主主義論」内田樹・白井聡

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内田 樹・白井 聡 著
東洋経済新報社(360p)2016.07.21
1,728円

この対談集のタイトルになっている「属国」とは、「日本はアメリカの属国であり、主権国家ではない」ことを指す。「属国民主主義」とは、「どれほど民主主義的に理想的なプロセスを経て物事を決めることができるとしても、決定の効力を及ぼすことのできる領域がどこにもないのならば、決定自体に何の意味もない」、そんな民主主義を指す。

最大の問題は、と白井聡が言う。「日本がアメリカの属国であるという現状を肯定しながらも、その原因となった敗戦という事実を、意識の中でちゃんと認めてないということですね。……『敗戦の否認』がもたらす大きな問題は、それによって日本人が、自らが置かれた状況を正しく認識できなくなってしまったということです。……本当は、主権がないのであれば、あるべき主権を確立しようとするのが、本来の意味でのナショナリズムであり、民主主義の帰結するところでしょう」

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2012年6月11日 (月)

「それでも三月は、また」谷川俊太郎ほか

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谷川俊太郎ほか 著
講談社(290p)2012.02.25
1,680円

谷川俊太郎、川上弘美、村上龍をはじめとした、17名の作家と詩人によるアンソロジーである。日本財団の「Read Japan Project」による刊行。編集者としてElmer LukeとDavid辛島という二人が名を連ねている。二人とも日本の文学作品を英語圏に紹介したり、翻訳している人物。この二人が17名を選んだ考え方は示されていないのだが、コンテンポラリーな感覚で言えばそれなりの統一感があるのかもしれない。ただ、評者しては初めて読む作家もおり刺激的であった。文学である以上、作家の感覚や感情で表現されているため、当然のことながら作品毎の好き嫌いが出てしまうのは止むを得ないことであるが、3.11によってもたらされているイメージの多様性を考えると一冊のアンソロジーが統一感を持って作られるということ自体至難の業だろう。本書の中で、今回の地震や津波といった自然災害にインスパイヤーされて書かれているもの6編、原発事故にインスパイヤーされて書かれているもの4編、両方もしくは不明のもの7編である。

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2008年11月 8日 (土)

「そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所」 松浦寿輝

Sokode 松浦寿輝
新潮社
(233p)2004.11.25
1,785円

本には読者の知性を要求するものと、感性を要求するものの二種類があると思う。この本は読者に対して、かなり鋭い感性と深い想像力を要求するようだ。題名と装丁に引かれて読みはじめたが、その危うい感性の回路に迷い込むのにさして時間はかからない。

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2008年11月 7日 (金)

「葬祭の日本史」 高橋繁行

Sousai 高橋繁行著
講談社(252p)2004.06.20

756円

この本を手にしていたら、家人から「縁起でもない」としかめっ面をされた。葬祭とか葬儀と聞くと忌諱したくなる気分はあるものの、何か不思議な興味も否定できない。死にまつわる儀礼の登場者は死んだ本人は別として、親族や知人、宗教家、葬祭業といった人たちだ。特に、葬祭業 に対して、「死体を相手に不当な利益を貪る仕事」とのイメージが過去強かったが、「彼らは毎日のように待ったなしで死者に接しているから、否が応でも死に ついて普遍的な思いを抱かざるを得ない。・・・宗教家以上に宗教的な存在なのではないだろうか。・・」こうした視点で葬祭・葬儀に関する歴史と「死のプロ セス」ともいうべき本人・残された家族の精神的清算の考え方をまとめた一冊である。

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