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超一極集中社会アメリカの暴走/中国民主化研究/チャイルド・オブ・ゴッド/チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド/チャイナ・ジャッジ/中国化する日本/小さな天体 – 全サバティカル日記/地図で読む戦争の時代/茶の湯とキムチ/超マクロ展望 世界経済の真実/趙紫陽極秘回想録/超・格差社会アメリカの真実/ちあきなおみ 喝采蘇る/小さな骨の動物園/チェチェン やめられない戦争

2017年5月17日 (水)

「超一極集中社会アメリカの暴走」小林由美

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小林由美 著
新潮社(240p)2017.03.25
1,620円

タイトルだけ見ると、この本は反米的な思想をもつ論者の批判的な著作と見えるかもしれない。いや、批判的であることは間違いないが、著者はアメリカにおけるIT産業の最前線、シリコンバレーで長年アナリストとして働いている女性である。

前著『超・格差社会アメリカの真実』もそうだったけれど、豊富なデータに基づいた鋭い分析、現象の背後にある社会構造や歴史への目配り、そして在米36年の実体験に裏づけられて、アメリカでいま起きていることの分析者として僕はいちばん信頼している。

トランプ大統領が誕生して100日がすぎた。大方の予想を裏切ってなぜトランプが勝ったのかについて、さまざまな論者が解説している。そのなかで、予備選からトランプに注目し支持者の声に耳を傾けた金成隆一の『ルポ トランプ王国』(岩波新書)が面白そうだが、その基になっている朝日新聞デジタルの連載を既に読んでいたので、もう少し広い視野からトランプを生んだアメリカ社会の変化を考えたものはないかと探して、この本を見つけた。

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2015年9月22日 (火)

「中国民主化研究」加藤嘉一

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加藤嘉一 著
ダイヤモンド社(544p)2015.07.31
2,592円

上海株式市場の混乱、天津の港湾大爆発による産業活動の停滞等の事件が続いた。以前であれば実質的な影響は中国国内に限られていたのだろうが、この手の事象が日本のみならず世界経済に影響を及ぼす時代になっていることをこの数か月の間でも実感させられている。こうした経済のグローバル連鎖において重要な要素になってきた中国に対して、本書の本来的な狙いは「習近平・中国共産党は国家・民族・文明をどこに導いていこうとしているのか」を「民主化」というキーワードで解明していこうという試みである。

著者の加藤嘉一は1984年生まれ、北京大学を卒業後、ハーバード大学フェローを経て、現在ジョン・ホプキンス大学研究員として活動している気鋭の研究者だ。著者のような文化大革命も天安門事件も体感していない世代の中国論とはどんなものなのかと言った興味も本書を手にした理由でもある。加藤は、9年以上の中国生活の体験とその後のアメリカでの研究活動、そして日本人であることの三点を統合することで本書が成立したと言っているのだが、確かにそうした経験によって得られた人脈を活用しつつ幅広い層の中国人やアメリカ人との対話が盛り込まれていて、500ページを超える大著となっている。

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2013年11月10日 (日)

「チャイルド・オブ・ゴッド」コーマック・マッカーシー

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コーマック・マッカーシー 著
早川書房(240p)2013.07.15
2,100円

『チャイルド・オブ・ゴッド』はアメリカ東南部の山村で7人の男女を殺したシリアル・キラーを主人公にした小説だ。でも、この男がなぜ「チャイルド・オブ・ゴッド(神の子)」なのか。

主人公、レスター・バラードはアパラチア山脈の麓に住み、「ヒルビリー(hillbilly)」と呼ばれる白人貧困層に属している。ふつうヒルビリーといえばアメリカ南部やアパラチアで生まれたカントリー・ミュージックのことだけど、もともとこの地域のプア・ホワイトを指す蔑称だったのが、レコード業界で彼らの音楽を指す言葉として使われたことから音楽用語として定着した。ちなみにロカビリー(rockabilly)という言葉も「ロックンロール」+「ヒルビリー」から生まれている。

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2013年10月21日 (月)

「チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド」東 浩紀

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東 浩紀 編
ゲンロン(160p)2013.7.10
1,470円

ダークツーリズムとは聞きなれない言葉だ。分かりやすく言えばヒロシマの原爆ドームや平和資料館を訪れたり、アウシュビッツを訪れるのがダークツーリズム。歴史の負の遺産をこの目で見て、学ぶ。日本語でいえば「社会見学」というのに近いだろうか。

この本は「福島第一原発観光地化計画」を提唱する東浩紀が、観光地としてのチェルノブイリを仲間と訪れて作成したレポート兼ガイドブック。東以外に社会学者の開沼博、ジャーナリストの津田大介、写真家の新津保建秀らが参加、執筆している。写真や図版もたくさん挿入され、ながめるだけでも今チェルノブイリはこんなになっているのかと面白い。

「観光地化計画」は、あえて観光という挑発的な言葉を使っているけれど、要するに25年後の福島がどうあるべきかを考えようというプロジェクト。もちろん今の福島第一原発はそれ以前に汚染水をどうするかという緊急の課題を抱え、そもそも廃炉の見通しもまったく立たず、除染や賠償も遅々として進まず、待ったなしの問題が山積しているのが現状だ。でも、次々に起こる目前の問題に対処するのは当然にしても、長期的課題はいずれ考えればいいことではなく(例えばこの国の少子高齢化は30年、40年前から分かっていた)、25年後の福島を見据えていま何をやるべきかが重要なのだ。

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2012年12月13日 (木)

「チャイナ・ジャッジ」遠藤 誉

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藤 誉 著
朝日新聞出版370p2012.9.30
1,785

尖閣問題や習近平体制への移行など、中国にからむニュースが多くなっている。それらについて雑誌を読んだりテレビを見たりしながら、中国の今にいちばん詳しく、しかも深い情報を持っているのは誰だろうと考えてみた。なかで、この人はどうかと思ったのがこの本の著者・遠藤誉。自らの中国体験を記した『卡子』が山崎豊子『大地の子』に盗用されたと訴えた人として知ってはいたが、著書を読んだことはなかった。

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2012年2月 6日 (月)

「中国化する日本」與那覇 潤

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與那覇 潤 著
文藝春秋(320p)2011.11.20
1,575円

『中国化する日本』というこの本のタイトル、ぱっと見では意味がよく分からないなあ。その分からなさは、サブタイトルの「日中『文明の衝突』一千年史」を眺めても一向に解消されない。ひょっとして反中国の右派が書いたトンデモ本? でも與那覇潤といえば日本近代史の研究者で、著書『帝国の残影』は小津安二郎の映画を通して昭和日本を分析した刺激的な本だった(book-naviで紹介済)。

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「小さな天体 – 全サバティカル日記」加藤典洋

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加藤典洋 著
新潮社(409p)2011.10.31
2,310 円

サバティカルとは大学の教員に対し一定期間毎に自主的な調査研究のために与えられる通常一年間の休暇。サラリーマンからすると想像もつかないような制度だ。もしサラリーマンが7年間働いた後、1年間の休暇を取りたいと言い出したら、まず職を失うことは確実だろう。大学の先生達の活動はチーム・プレイというよりも個人技であり、職人の世界に近い職業だと思う。そうでなければこのような制度は運用不可能だ。もっとも、サバティカルがラテン語で安息日ということを考えると、こうした制度によって充電したり、自身の研究・研鑽を深めることは意義深いことであることは疑いないと思いつつ、ある種の妬ましさとともに読み進んだ。

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2011年5月12日 (木)

「地図で読む戦争の時代」今尾恵介

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今尾恵介 著
白水社(263p)2011.03.26
1,890円

昨年、旧東海道を歩いてみて地図の持つ力を痛感した。手にした地図と目の前の建物や狭い通りを確認しながら注意深く辿っていく。目標物が少ない旧道を歩くときには「勘」で進むことははなはだ危険である。曲がりくねった田舎道はいつしか方向感覚を狂わせて行く。もう一つの使い方として地図を机上に広げて実際の地形やランドスケープを想像するといったこともあるだろう。これは「使い方」よりも「楽しみ方」と言ったほうが良いかもしれない。「地図で戦争の時代を読む」ことと「戦争の時代の地図を読む」という本書のテーマはまさにそこにある。

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2010年12月 9日 (木)

「茶の湯とキムチ」丁 宗鐵

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丁 宗鐵 著
講談社(258p)2010.11.12
1,575円

著者の丁は1947年東京生まれというからまさに団塊の世代。横浜市立大学の医学部を卒業して北里研究所・東大医学部助教授を経て日本薬科大学教授が現職という経歴。父親や母方の祖父が韓国で生まれ育ち、日本に渡ってきたという。そして、還暦を迎えたときに本名のまま日本国籍を取得している。こうした自身の日韓双方のアイデンティティを生かして新たな日韓論を構築するという意図とともに、「在日」という立場のアイデンティティの確立をめざしているというのが本書である。加えて、この二つの論点が微妙に交錯しているのも垣間見えるところが特徴だろう。日韓を考える上で「鳥瞰図的な文化論」という言い方で彼の視点を説明している。

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「超マクロ展望 世界経済の真実」水野和夫・萱野稔人

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水野和夫・萱野稔人 著
集英社新書(240p)2010.11.22
756円

水野和夫というエコノミストの存在を教えてくれたのは、わが隣人の I さんだった。 I さんは川柳をたしなみ、落語は古今亭志ん朝が朝太と名乗っていた二つ目時代から聞いている年季のはいった通人なのだが、しばらく前に早期退職するまで、さる都市銀行の幹部だった。I さんは現役時代から毎日の株価や為替の動きを大学ノートにつけていて、それは退職した今も変わらない。月に一度くらいの割でお茶を飲みながら、落語や映画や本などの趣味的な話題から政治経済の床屋政談まで、雑談をかわすのが互いの楽しみになっている。あるとき、われら団塊の世代の将来みたいな話をしていて、

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