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噺は生きている/花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION/敗北力─Later Works/はじめての福島学/背信の科学者たち/VANから遠く離れて 評伝石津謙介/廃墟建築士/敗因と/半島を出よ/ハイスクール 1968/はるかな碧い海/俳句的生活/博奕の人間学

2017年10月22日 (日)

「噺は生きている」広瀬和生

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広瀬和生 著
毎日新聞出版(320p)2017.07.26
1,728円

頁をめくる毎に著者の落語に関する造詣だけでなく、愛情の深さも良く判る一冊。それだけに、いささか偏愛とも言えそうな微細な分析には納得というよりも驚きが先行するというのが実感である。落語家に関する評論は数多く世に出されているが、本書は「演目論」であり、こうした演目(ネタ)を核にして落語を語り尽くしている本は珍しい。広瀬が俎上に乗せた演目は名作の名をほしいままにしている「芝浜」「富久」「紺屋高尾・幾代餅」「文七元結」の四つである。演目とは単なる「ネタ(種)」であり、各時代の落語家たちが独自の工夫を加えてさまざまな「演(や)り方」をして噺を語って来た。その意味を広瀬はこう語っている。

「落語の演目とはあくまでも『器』にすぎない。その『器』にそれぞれの演者が『魂』を吹き込んでいくことで、初めて『生きた噺』となる。…噺は生きている。だからこそ落語は面白い」

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2017年8月20日 (日)

「花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION」ブレイディみかこ

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ブレイディみかこ 著
ちくま文庫(308p)2017.06.10
842円

ブレイディみかこという書き手の名前を見かけるようになったのは数年前だろうか(遅いって!)。たいてい「イギリス」と「パンク」という言葉がセットになっていた。小生はイギリスに行ったことがないし、パンク・ミュージックも聞いたことがない。気になりながらも手を触れないできた。

でもあるとき、彼女のブログ「THE BRADY BLOG」を読んだら、これが面白いんだなあ。彼女にしか書けない体験と発想と文体。同じようにブログを使って発信している者として、「参りました」というしかない。最近は雑誌『世界』なんかにも寄稿しているようだけど、雑誌や本といった身構えたメディアではなく、ツイッターやFBといった瞬間的な反応が命のSNSでもなく、ある程度まとまった文章を、しかも友達に語りかけるみたいに気軽に発信できるブログというメディアがあったからこそ登場してきた書き手だと思う。

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2016年11月20日 (日)

「敗北力─Later Works」鶴見俊輔

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鶴見俊輔 著
編集グループSURE(256p)2016.10.19
2,376円

昨年7月に亡くなった鶴見俊輔の、僕はきれぎれの読者にすぎない。100冊を超える鶴見の著書・共著・編著書のうち、手に取ったのは10冊に満たない。鶴見が組織したベ平連の集会やデモに参加したこともない。それでもはじめて読んだ『日常的思想の可能性』(1967)以来、亡くなるまでずっと気にかかる存在だった。その気にかかる部分が、年とともにだんだん大きくなってきていた。

20代のころ読んで強烈に印象に残っている一節がある。吉本隆明対談集『どこに思想の根拠をおくか』に収録された、書名と同じ標題の鶴見と吉本の対談。べ平連の評価をめぐって、吉本がベ平連は社会主義に同伴するもので折衷的であり、世界を包括しうる運動ではないと批判した後のやりとりだった。

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2015年4月17日 (金)

「はじめての福島学」開沼 博

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開沼 博 著
イースト・プレス(416p)2015.03.01
1,620円

3月11日の原発事故から四年が経って、落ち着いて来た領域もあれば、まだまだ不安定な状況を続けている点も少なくない。ただ、落ち着いたと思えるところも、問題が解決したわけではなく、人々が忘れつつあったり、直接的な傷が見えなくなったということでしかない事柄が多いように思う。福島の問題は多岐に亘っている。正しく理解し議論するための前提知識も広範囲に必要とされるという厳しさがある。本書はこの四年間の「福島」の現実を数字としてとらえ、正しい理解にたどり着く手順を示すとともに、「とりあえずこれだけは知っておいてもらいたい」という事柄を一冊にまとめたと著者、開沼博は言っている。福島出身で3.11のあと福島大学で教鞭をとりつつ、日々地元に根付いて活動している人間からの発信として、先入観なしに本書を読んでみた。

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2014年8月11日 (月)

「背信の科学者たち」ウイリアム・ブロード/ニコラス・ウェイド

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ウイリアム・ブロード/ニコラス・ウェイド 編著
講談社(354p)2014.06.20
1,728円

原書「Betrayers of the Truth ( 真実の背信者たち)」は1982年にアメリカで出版され、1988年に化学同人から邦訳が出版された。科学の世界の不正の歴史とその構造に正面から取り組んだものとして高い評価を得た本である。発刊後30年たった現在でも科学不正に関する「古典」として確たる評価を得ている。そもそも本書が書かれたトリガーは1970年代から80年代にかけて、アメリカで科学不正が数多く発覚したことにあるのだが、本書が本年(2014年)6月に日本で再刊行された経緯は、STAP細胞に係る科学不正事件の発生にあることは言うまでもない。本の帯には「STAP騒動の底流をなすものは、この本を読めば、すべてわかる」という挑戦的な言葉が並んでいる。

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2012年5月11日 (金)

「VANから遠く離れて 評伝石津謙介」佐山一郎

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佐山一郎 著
岩波書店(312p)2012.03.24
3,360円

戦後、「VANジャケット」を率いて、青年の服装文化に大きな影響を与えた石津謙介の評伝である。今年公開された「三丁目の夕日’64」では主人公堀北真希がデートする相手はバリバリのIVYルックで身を固め、デートの場所は銀座みゆき通。団塊の世代よりも年上の東京オリンピックに大学生ぐらいだった人達にとってはVANが与えたインパクトの大きな流行だったと再認識させられる映像だった。石津謙介が「ヴァンジャケットの総師」や「アイビー・ルックの提唱者」と言われていた期間は十年から十五年間ぐらいのものだったのではないだろうか。

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2009年3月10日 (火)

「廃墟建築士」三崎亜記

Haikyo 三崎亜記 
集英社224p2009.01.26
1,365円 

「となり町戦争」で2007年の小説すばる新人賞を受賞したこの作家の作品を読むのは初めてだ。このところ小説を読むことがめっきり少なくなっている。若い時はかなり小説を読んでいたのだが、読むべき小説が少なくなったと言うほど最近の文壇情況を知っている訳でもなし、気持ちの問題だと自己分析。そんなことを考えている間に一冊読み終えることも可能と早々に気持ちを切り替えて、手にしたのが本書。

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2008年11月11日 (火)

「敗因と」 金子達仁・戸塚啓・木崎伸也

Haiin 金子達仁・戸塚啓・木崎伸也著
光文社(304p)2006.12.20

1,575円

ジーコ・ジャパンがドイツ・ワールドカップで1勝もあげられずに予選リーグで敗退したことを、誰もが忘れたがっ ているように見える。僕だってそうだ。決勝トーナメントに進んでくれるにちがいないと誰もが期待していただけに、失望した記憶を思い出すなんてちっとも楽 しい作業じゃない。忘れたいというのは、愉快でない記憶はなかったことにしたい、起きなかったことにしたいという、人間が本能的に不快を避けようとする心理の働きだろう。で も、失敗を忘れるのではなく逆に意識化して、なぜ失敗したのか、そうならないために何をしなければならないかを考えなければ、失敗から学んで経験を蓄積す ることはできない。

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2008年11月 9日 (日)

「半島を出よ」(上・下) 村上 龍

Hanto 村上 龍
幻冬舎(上432p・下512p)2005.03.25

上1,890円・下1,995円

面白く一気に読んだ。そのことを書くつもりでいながら、気がついたら1カ月も経ってしまっている。真夏の暑さの せいか、こっちの脳が軟化したせいか、小説のディテールをすっかり忘れてしまった。うまく書けそうにないけれど、いま頭に残っていることだけでもメモして おきたい。この小説の読後感を一言で言えば--よくできたハリウッド映画みたい。

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2008年11月 8日 (土)

「ハイスクール 1968」 四方田犬彦

High 四方田犬彦
新潮社(256p)2004.02.25

1,680円

高校生だった四方田犬彦が熱中した小説、詩、評論、映画、音楽などを、本文からひろってアトランダムに挙げてみる。『マルドロールの歌』、『悲しき熱帯』、谷川俊太郎、田村隆一、谷川雁、『死霊』、『悪の華』、ビートルズ、ドアーズ、ローリング・ストーンズ、 『2001年 宇宙の旅』、横尾忠則、ゴダール、ピーター・ブルック、パラジャーノフ、ブニュエル、『ガロ』、『COM』、白土三平、つげ義春、佐々木マ キ、宮谷一彦、岡田史子、大江健三郎、ランボー、マイルス、コルトレーン、アルバート・アイラー、『血と薔薇』、渋澤龍彦、種村季弘、バタイユ、寺山修 司、吉岡実……。

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