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ヒマ道楽/非除染地帯/東日本大震災復興時刻表、福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書/暇と退屈の倫理学/日々の食材ノート/ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄/ひととせの ー 東京の声と音/樋口一葉『いやだ!』と云ふ/白檀の刑/ひべるにあ島紀行/100円玉ではじめる驚愕の財テク新理論(続)/百円シンガー 極楽天使

2017年2月18日 (土)

「ヒマ道楽」坪内稔典

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坪内稔典 著
岩波書店(224p)2016.12.10
2,052円

団塊の世代である私はフルタイムの仕事を卒業して4年。多少の仕事は有るものの、ボランティア活動、街道歩き、陶芸、読書、ジャズといった趣味で日々を過ごしている。モノ忘れを補う適度な緊張とゆるく流れる時間の混在した生活を楽しみながら、ある日、散歩の途中で「ほんとうはヒマなクセに。お忙しいアナタに 現代ストレス解消法!」というサブ・タイトルに惹かれて本書を手にした。

著者の坪内稔典は1944年生れ。学生時代から俳句を作り続け、近代日本文学、特に正岡子規の研究者となって詩歌を研究してきた人。本書は産経新聞大阪本社版に連載していた「モーロクのススメ」という2013年から2016年のコラムからの抜粋であり、フルタイムの仕事を卒業して二年目の72才である。「金を稼ぐ本職」から離れ、時間の制約からは解き放たれた生活による人生のリズムの変化期におけるエッセイである。

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2014年11月16日 (日)

「非除染地帯」平田剛士

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平田剛士 著
緑風出版(168p)2014.10.15
1,944円

東京電力福島第一原子力発電所の事故から3年半がたった。とはいえ事故を起こした原子炉の廃炉作業はこれからだし、今も4万人以上の住民が県外に避難したまま故郷に帰れないでいる。

汚染地域での除染が進んでいるとはいえ、除染作業が行われているのは住宅や道路、田畑だけ。それも期待した効果が出ていないところも多い。県の面積の8割を占める森林は手つかずのままだし、河川、湖沼、海浜、海洋もそのままになっている。また双葉町全域や浪江町・大熊町の大部分を占める「帰宅困難地域」はそもそも除染の対象になっていない。「3.11後の森と川と海」とサブタイトルを打たれたこの本は、こうした「非除染地帯」の生態系がどうなっているかを追ったルポルタージュだ。

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2012年4月11日 (水)

「東日本大震災復興時刻表」越前 勤

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「東日本大震災復興時刻表」
越前 勤 著
講談社(176p)2012.03
2,625円

「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」
福島原発事故独立検証委員会 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン(412p)2012.03.12
1,575円

この二冊を机において、今回の震災と事故とはなんだったのか考えて見る。一年間という時間はまだまだ当面の対処の期間であり、対策についても手探りの期間でしかなかった。特に原発事故に関して言えば数十年といった時間軸で対策の効果を見ていかなければ、その影響実態は判断できないだろう。一方、発生した被害や痛みはどんどん風化していって、残された住民の怨嗟や遺棄された国土だけがモニュメントのように残るという事態だけは避けなければならない。私たちは今回の震災や原発事故で、肉親や仲間、家や風景、生活の場たる海や田畑、伝統や文化などあまりに多くのものを失っている。そうした状況の中からも新たに生まれてきた夢や希望はどんな些細なものであっても拾い上げて行きたい、そんな気持ちで取り上げたのが「東日本大震災復興時刻表」である。

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2012年1月10日 (火)

「暇と退屈の倫理学」國分功一郎

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國分功一郎 著
朝日出版社 (402p) 2011.10.18
1,890円

仕事の時代を終えた団塊の世代にとって「暇と退屈」は概念だけでなく、極めて日常的なものとして捉えなければならない年齢になっている。そんな「暇と退屈」が「倫理学」になるものなのかとタイトルに惹かれてこの大著を手にした。「倫理学」であるためにはいかに生きるべきかを問う内容になっていなければならないのだが、「暇と退屈」から「倫理」が導き出されるという期待と疑問が相半ばしての読書であった。

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2008年11月12日 (水)

「日々の食材ノート」 渡辺有子

Hibino 渡辺有子著
筑摩書房(127p)2008.04

1,575円

この本は、表紙は言うに及ばず本文・奥付にいたるまで活字は一切使われていない。全て手書きの文字をそのまま印 刷している。その字はけして達筆ではないし、読みやすいという程の字でもない。デザイン的にはぎりぎりのところを狙った本なのだろう。料理本の常道として 写真も添えられているが、その写真は料理を理解してもらうためのものではなく、料理や器が著者にとってどのように存在してほしいかを示すための画像として 扱われているように思える。

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2008年11月 9日 (日)

「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」 中山康樹

Bill 中山康樹著
河出書房新社(242p)2005.03.19

1,680円

ピアニスト、ビル・エヴァンスの演奏に出会ったのは40年程前のことで、その頃はアルバムがリリースされても輸入版は高価で、新譜はジャズ喫茶かラジオ放送に頼って聴いていたものだった。そんなことで、ディスコグラフィー的にはかなり知識は有しているし、時代背景も同時代的に進行していたのでそれなりの理解はしていたつもりだが、エヴァン スの幼年期を含めて生涯の音楽活動と周辺の動きを網羅した本書を読んで、そんなこともあったのかと再認識させられる事柄も多く、エヴァンスの人となりを活 写していて、新たなエヴァンス像を想起させられた部分も多い。

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2008年11月 8日 (土)

「ひととせの ー 東京の声と音」 古井由吉

Hitotose 古井由吉著
日本経済新聞社(251p)2004.10

1,890円

1937年生まれ、東京流入二世と自称する古井が声や音をキーワードとしてまとめた57編の小文集である。生活の中の音の感じ方は評者と10才年上の古井だけに時代の差を実感するが、その違いは違いとして彼の持つ感性と表現が楽しめる一冊だ。いまや東京では音で季節の移り変わりを感じるとのいうも希薄になってしまった。逆説的にいえば、車も人通りも少ない静かな(音の無い)季節が正月を実感す るというのもなにやら寂しい。表現されている多くの声と音は、忘れていた記憶が掘り起こされ、懐かしさがふつふつと湧いてくる。

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「樋口一葉『いやだ!』と云ふ」 田中優子

Higuchi 田中優子著
集英社新書(208p)2004.07.21

756円

樋口一葉をまともに読んだことがない。僕たちの時代にはまだ「教養」というものが生きていたから、学生時代、こ のくらいは読んでおかなくてはと思って『たけくらべ』に挑戦したことがある。そして見事に挫折した。擬古文に手こずったこともあるけれど、それ以上に、こ の小説のなにが面白いのか分からなかった。いまも当時も、樋口一葉は漱石や鴎外によって完成される近代小説を切り開いた先駆者の一人として評価されていた。そういう眼から見ると、一葉の小説には 近代以前の混ざりものが多すぎ、書き方においても、そこに描かれる人物像からも、「近代」がくっきりとは立ち上がってこないように感じた。

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2008年11月 6日 (木)

「白檀の刑」(上・下)莫言

Byaku 莫言(モオイエン)著・吉田富夫訳
中央公論新社(上360p、下352p)2003.07.15

各2,940円

いま、どんな小説が面白いといって、中国の小説が掛け値なしにいちばんじゃないかと思う。『白檀の刑』は、子どものころ夢中になって読んだ『巌窟王』や『真田十勇士』なんかの、波瀾万丈の物語に興奮した気分を思い出させる小説だった。国中にエネルギーが沸騰している時代に、その空気が映画や音楽や小説に反映するのは当然のこと。映画は1980年代から中国ニューウェーブとして世界に 紹介されたけれど、僕たちが中国の新しい小説を次々に読めるようになったのは、ようやくこの10年のことにすぎない。

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2008年11月 4日 (火)

「ひべるにあ島紀行」 富岡多恵子

Hiberu 富岡多恵子著
講談社(302p)1997. 09.10
1,785円

スイフト、あの「ガリヴァー旅行記」のスイフトの考証から始まり、それが縦糸となり、ケイと私との旅行記風物語が幻しく横糸につづられる実験的な小説。次第に両者はタペストリーの如く歩み寄り、混交し、時空をこえて人と人の魂、心象風景がそこに広がっていく。「群像」に連作として登場したときから、単行本化が待たれていた書。実際に糸も登場する。島独特の編み物とケルト紋様に打ち込むハンナとの交流だ。途中から西鶴、旧友浪之丞が加わる。

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