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米軍が見た東京1945秋/別海から来た女/「辺境」からはじまる 東京・東北論/平凡パンチの時代/蛇にピアス/ヘルタースケルター/編集長『秘話』

2016年1月21日 (木)

「米軍が見た東京1945秋」文・構成 佐藤洋一

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文・構成 佐藤洋一  
洋泉社(224p)2015.12.23
2,592円

敗戦翌年の1946年、『東京一九四五年・秋』(文化社)というザラ紙64ページの写真集が発売された。版元の文化社は、戦中に対外宣伝グラフ誌『FRONT』を刊行していた東方社(中島健蔵、林達夫、原弘、木村伊兵衛ら)のメンバーが、敗戦後間もなく立ちあげた編集・出版工房。その最初の仕事『東京一九四五年・秋』は、木村伊兵衛ら旧東方社の写真家によって撮影された「終戦後の東京の、生活のルポルタージュ」(木村)である。

この写真集のタイトルを意識した本書『米軍が見た東京1945秋』は、同じ敗戦直後の東京が米軍によって撮影された写真で再現されている。米国立公文書館でこれらの写真を発掘した佐藤洋一は、「この激動の1年間の風景を写し出した物的な資料は、日本には意外なほど残されていない」と書く。

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2012年9月12日 (水)

「別海から来た女」佐野眞一

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佐野眞一 著
講談社(290p)2012.05.25
1,575円

佐野眞一の著作を読むのは本書が三冊目となる。彼が常々ノンフィクションの要諦と言っている「論より証拠」という発想は本書でも十分に貫かれている。三件の殺人、六件の詐欺及び詐欺未遂、一件の窃盗で平成二十四年の一月に起訴され、四月十三日に死刑判決で結審した木嶋佳苗に関する犯罪のドキュメントであるが、この事件が報道された頃、それなりに分別があるであろう中老年が小太りで、どう見ても美人とは言い難い容姿の女に何故易々と騙されたのかという素朴な疑問を感じていたことを思い出す。繰り返し報道されるTV映像の木嶋佳苗と和歌山砒素カレー事件の林真須美の姿が重なって見えてしまったりした。本書の狙いを佐野はスキャンダラスな意味からでなく考えると宣言した上で、前半を木嶋佳苗が生まれ育った北海道の別海という土地柄とその歴史に注目して、佳苗を取り巻く多様な人々とのインタビューを大きな要素として構成、後半を100日間の裁判を傍聴した記録として構成している。

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2012年8月12日 (日)

「『辺境』からはじまる 東京/東北論」赤坂憲雄・小熊英二

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赤坂憲雄・小熊英二 編著
明石書店(360p)2012.05.20
1,890円

3.11から2カ月後の昨年5月、赤坂憲雄、小熊英二、山内明美という世代も専門領域も異なる3人の研究者・評論家が、東日本大震災と福島第一原発の事故について一橋大学で鼎談をおこなった。その内容は単行本として『「東北」再生』(イーストプレス)にまとめられたが(book-naviで<正>氏が取り上げている)、本書はその続編に当たる。

その後、この3人が中心になって、東北をフィールドに研究している若手研究者の報告を聞く会が定期的に開かれた。本書には山内を含む8人の研究者がその場での報告を基に書いた論考8本が収められ、それを受けて巻末で赤坂と小熊が対談している。

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2010年3月 7日 (日)

「平凡パンチの時代」塩澤幸登

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塩澤幸登 著
河出書房新社(501p)2009.12.04
2,940円

著者塩澤は1947年生まれ、1970年に早稲田大学文学部を卒業して「平凡」「週刊平凡」「平凡パンチ」「ターザン」などの編集に携わってきた編集のプロ。評者とまったく同じ時代を過ごしてきた男だ。われわれが物心ついた頃には、団塊の世代を対象とした商品やサービスが巷に溢れており、人数が多いこともあって商売のネタとしてターゲットとされるのはいたしかたないことだった。雑誌でいえば、1959年(小学校高学年の頃)に「少年マガジン」「少年サンデー」が週刊誌として創刊された。それ以前の漫画雑誌は「少年」など月刊誌だったのに比較するとマンガのテンポや展開も圧倒的に早くなり、漫画家も新人がどんどん出てきて、世の中が変わりつつあることを子供ながらに感じていた。

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2008年11月 8日 (土)

「蛇にピアス」金原ひとみ

Hebi 金原ひとみ著
集英社(128p)2004.01.10

1,260円

才能という原石が、ごろんと放りだされたような小説だと思った。新人のデビュー作にそんな印象を抱いたのは(たくさん読んでいる訳ではないが)久しくなかった経験だ。何人もが同じように語っているけれど、僕も村上龍の『限りなく透明に近いブルー』を思い出した。冒頭の一行目から、小説の最深部に向かって衒(てら)いもなく真っすぐに掘りすすんでゆくのが気持ちよい。

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2008年11月 6日 (木)

「ヘルタースケルター」 岡崎京子

Helter 岡崎京子著
祥伝社(320p)2003.04.20

1,260円

マンガ家の岡崎京子が酔っぱらい運転の車にはねられて執筆不可能となり、僕たちの前に新作が現れなくなってもう 7年がたつ。その間、雑誌『switch』が特集を組んだり、岡崎京子論やムックの岡崎本が出版されたり、未完の『untitled』が刊行されたり、そ の評価は高まるばかりだ。そしていちばん待たれていたのが『ヘルタースケルター』の刊行だった。ボリス・ヴィアンの小説をマンガ化した『うたかたの日々』(宝島社)もほぼ同時に 出版されたが、ビートルズには珍しく激しいリズムをもった曲の名前をタイトルとした本書は、とりわけ雑誌掲載時から傑作と評判が高かったものだ。

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2008年11月 4日 (火)

「編集長『秘話』」 伊藤文学

Hensyu 伊藤文学著
文春ネスコ
(215p)2001.12.24
1,575円

このほど、「薔薇族」編集長・伊藤文学さんの「編集長『秘話』」が出版された。「秘話」とは、それまで世間に知られることの無かった珍しい話を意味するが、「薔薇族」の30年を語ったこの本には、日本で初の同性愛雑誌の編集長ならではの苦労や、喜びが紹介されている。

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