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三輪山 何方にありや/水鏡綺譚/〈民主〉と〈愛国〉/民族という虚構/『未完成』の謎学

2019年3月15日 (金)

「三輪山 何方にありや」鈴木 慧

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鈴木 慧
郁朋社(248)2019.01.29
1,620円

タイトルの通り、古事記の中巻に記述されている神武東征(筑紫からの侵略)に対して、守る側の奈良盆地連合王国のリーダーたちの戦いの一年を描いている小説。神武東征がテーマであれば狭野彦(神武天皇)からの目線で語られる話が常であるが、本書では連合王国の王である饒速日と最大集落の首長である長髄彦を中心に、彼らの思惑と智謀、そして戦いの日々を通して一人ひとりを描写している。饒速日は長髄彦の義弟である。彼は王としての正統性や集落の開拓や運営におけるバランスの観点と、饒速日が権力欲がないこと、もっと言えば権力を握るだけの戦力を保持していないことを理由に王に推戴されているといった設定がこの話のポイントのひとつになっている。

西暦175年、連合王国の新年の幹事会からこの物語は始まる。筑紫勢が周防、吉備を制したといった情報は以前からもたらされていたものの、筑紫勢の目標が奈良盆地であるとは王国の人々にとって身近な問題としては考えていなかった。しかし、軍勢の動きから、侵略の危険が目前に迫った王国の首長たちにとって共通の敵の存在が明らかになり、結果として王国の結束を強めていく。最終意志決定機関である幹事会での首長たちの発言の順番、発言の表現や言い回しといった緻密な描写は首長間で微妙な駆け引きが必要だったこと、そして時代を超えて組織論としてのリーダーたちの思惑と心情が巧みに綴られている。

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2008年11月 8日 (土)

「水鏡綺譚」 近藤ようこ

Mizu 近藤ようこ著
青林工藝舎(452p)2004.05.31

1,680円

読み切りのストーリーをいくつも重ねながら、全体がさらに大きな物語をなしてゆくこの漫画を読みながら、いつかどこかで見たという既視感をずっと感じていた。この顔は、この目は、どこかで見たことがあるぞ。僕は女性漫画をそんなにたくさん読んでいないし、近藤ようこの作品も現代ものを2、3冊読んだことがある程度だから、その既視感がどこから来るのか分からないでいた。

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2008年11月 4日 (火)

「〈民主〉と〈愛国〉」 小熊英二

Minsyu 小熊英二著
新曜社(968p)2002.10.31

6,300円

それにしても968ページという分厚さは、この著者の、ひいては40歳前後の新世代の研究者の、なにごとかを 語っているのではないか。デビュー作の「単一民族神話の起源」が464ページ。「<日本人>の境界」が790ページ。次は1000ページを超えるのだろう か。読み終わるまで1カ月以上、通勤電車のなかでこの本を読んでいると、いつも降りるころには手首が痛くなっていた。

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「民族という虚構」 小坂井敏晶

Minzoku 小坂井敏晶著
東京大学出版会(206p)2002.10.10

3,360円

ずいぶんむずかしい本を読んでしまった。友人に面白いよと勧められたからだが、読みはじめてちょっと後悔した。 勤め人を30年以上もやっていると、日々は雑用の積み重ねで過ぎてゆく。ものを考える、しかも抽象的にものを考えることなんかほとんどない。最後まで読ん だのは、なかば友人への意地のようなものだった。そして読み終わって、読んでよかったと思った。

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「『未完成』の謎学」 人間おもしろ研究会

Mikan 人間おもしろ研究会編
青春出版社(254p)1998.02.01 
476円

読書量と勘が勝負
これはお手軽アンソロジーとは一寸異なった力作。渉猟された図書が75冊なのに対して、6章立てで取り上げられたテーマは58テーマ。それも「未完成」 という視角から追ったもので、ずばりの署名はほとんど無く、これまでの読書量と新たに該博な知識を生かしての勘による探りしかない。それも役立つ部分は少 ない、75冊の背後にはもっと多くの図書が隠されていよう。

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