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名誉と恍惚/滅亡へのカウントダウン(上・下)/メルトダウン、レベル7、プロメテウスの罠/免疫革命/滅亡のシナリオ/メニューの読み方

2017年11月22日 (水)

「名誉と恍惚」松浦寿輝

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松浦寿輝 著
新潮社(768p)2017.03.05
5,400円

松浦寿輝という名前は僕の頭のなかで詩人、フランス文学者として登録されていた。パリのエッフェル塔を現代思想っぽく読み解いた『エッフェル塔試論』をぱらぱら読んだこともある。でも、調べてみると小説『花腐し』で芥川賞を受賞したのが2000年。以来、10作近い小説を発表しているから、小説家としてのキャリアも十分に長い。でもその小説に手が出なかったのは、詩人・研究者の書く小説はあまり面白くなさそうという、こちらの勝手な思い込みと偏見による。

書店の棚で、ずいぶん分厚い本だなあと本書を手に取ったとき、帯に筒井康隆が推薦文を書いているのが目に入った。「舞台は子供の頃から憧憬していた魔都・上海。まるで青春時代の古いモノクロの超特作映画を見ているような気分になり、僕はミーハー的な惚れ込み方をしてしまった」

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2014年5月16日 (金)

「滅亡へのカウントダウン(上・下)」アラン・ワイズマン

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アラン・ワイズマン 著
早川書房(上360p、下368p)2013.12.20
各2,160円

日本では今、人口の減少が問題になっている。でも地球規模で見ると、世界では逆に人口の爆発的増加が危機として叫ばれている。一方の減少と他方の増加。両者の関係をどう考えたらいいんだろう。「人口大爆発とわれわれの未来」というサブタイトルのこの本は、アメリカのジャーナリスト、アラン・ワイズマンが世界二十数カ国を回って現状をレポートしながら人口問題を考える。アメリカのジャーナリズムの実力を見せつけると同時に、なかなかに怖ろしい本だった。でも日本の人口減少が必ずしも悲観すべきことではないことも分かってくる。

僕たちはそもそも人口問題について、あやふやな知識しか持っていない。確か20年ほど前、環境を悪化させずに地球上に生活できる人類の適正な数は20億とか30億とか聞いた記憶がある。でも今ではその数を遥かに超えて、70億以上の人類がこの惑星にひしめいている。ヨーロッパや日本など先進国では人口が抑制されている一方、開発途上国ではいまだに激しい人口増加が続いている──。

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2012年4月11日 (水)

「メルトダウン」大鹿靖明

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「メルトダウン」
大鹿靖明 著
講談社(368p)2012.01.27
1,680円

「レベル7」
東京新聞原発事故取材班 著
幻冬社(368p)2012.03.11
1,680円

「プロメテウスの罠」
朝日新聞特別報道部 著
学研パブリッシング(272p)2012.03.13
1,300円

マス・メディアの重要な仕事のひとつに調査報道がある。日々のニュースを追うだけでなく、時間をかけた独自の取材で事件や事故の全体像を描き、問題をえぐりだす。手間ひまも金もかかり、時に権力の内側にまで入り込む必要もあるから、今の日本で個人の力で調査報道を継続することはむずかしい。福島第一原発の事故は、最悪の場合、首都圏の避難という国の存亡にも関わりかねない大事故だった。そのとき、現場の第一原発や官邸、霞が関で何が起こっていたのか。巨大地震や津波とともに、これこそマス・メディアの調査報道の力が試される出来事だったろう。それに対する答えが、ようやく単行本になりはじめた。

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2008年11月 6日 (木)

「免疫革命」 安保 徹

Meneki 安保 徹著
講談社インターナショナル(288p)2003.07.11

1,680円

今年の春、仕事上の友人と親類の一人が立てつづけにガンにやられた。僕自身もガンの疑いがあって、検査結果はシロだったけれど、結論が出るまでの1カ月近く、憂鬱な気分で桜が咲き、散るのをながめていた。その間に数冊のガンに関する本を読んだ。なかでいちばん感銘を受けたのは、名著と評判の高い柳原和子の『がん患者学』(晶文社)だった。自身もガン患者 である柳原が、手術と抗ガン剤・放射線治療の西洋医学に絶望して民間療法や代替医療、漢方に救いを求めて生きのびた患者に話を聞く、というもので、NHK で映像化されたからご覧になった方も多いだろう。

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2008年11月 4日 (火)

「滅亡のシナリオ」 川尻 徹

Metsubou 川尻 徹 著
辰巳出版(270p) 1999.07.15
590円

巧妙な物語の導入
暑い盛りのままにハルマゲドンも来ず、2000年はすみやかに訪れようとしているが、オウムの活発な再生とそれへの新たな法律的対応の検討、海外教祖への終末が来なかったことによる信者の襲撃が伝わるなど、末世思想は必ずしも消滅した訳ではない。著者は平成4年死去の精神科医とあるように、再々刻の書。今も怪しげな戦争・兵器・見知らぬ国ものを第4特集ものとして抱える週刊プレイボーイに 1984年好評連載されたもののヒトラー部分のまとめ、連載の仕掛け人は最近も社会面を醜聞でにぎわした康芳夫である。祥伝社ノンブックスで1954年 に、その後クレスト社のクレスト選書に収載。

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「メニューの読み方」 見田盛夫

Menyu 見田盛夫著
 平凡社(328p)1998.02.15 
1,050円

実地検証の強み
ドキュメンタリーの、妙にして特異な書ばかりといっていい、平凡社ライブラリーでちょと手が出しにくい印象だったが、これは気軽で役に立つ功著。著者はラジオ放送畑の出身で、退社後に多彩な趣味領域を渉猟したのちにフランス料理に到達、ニューベル・キュイジーヌに危機感を覚え、レストラン批評年鑑まで挙行した御仁である。

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