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拉致と日本人/楽園の歳月 宮迫千鶴遺稿集/ランドマーク/ラーメン鑑定書/ラスト・サンクチュアリ

2017年9月20日 (水)

「拉致と日本人」 蓮池透・辛淑玉

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蓮池透・辛淑玉 著
岩波書店(176p)2017.06.28
1,836円

北朝鮮に拉致された蓮池薫の兄・蓮池透と在日三世で在日問題やヘイトスピーチ問題に取り組んできた辛淑玉による対談。この二人は各々の立場で賛否の議論を生みつつも、権力に抗する姿勢を弱めることなく発言し続けている。今回の対談は辛が蓮池に質問し会話を進めるという形をとっているのだが、拉致問題に真剣に取り組んでいるように思えない政治家、「家族会」と「救う会」の関係の変節、「家族と国家」の対立軸における拉致被害者たちの苦悩、拉致被害者間の帰国者・家族と未帰国者家族との分断等に焦点を当ててつつ、拉致問題のもう一つの側面である、「北朝鮮と在日朝鮮人」については、変質していった民族団体の現状、在日間におけるバッシング等を語っている。

2017年夏に本書を読んでいるのだが、アメリカ合衆国第45代大統領トランプと北朝鮮総書記の金正恩との間で核実験とミサイルに関するチキン・レースが繰り広げられる中、日本列島を飛び越える形で北朝鮮の弾道ミサイルが発射されたというニュースが流れている。日本と朝鮮半島との間には、戦前から現代に至るまで国家間というだけでなく、一人一人の人間としての体験や思いが蓄積されている複雑な歴史が存在する。

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2009年3月10日 (火)

「楽園の歳月 宮迫千鶴遺稿集」宮迫千鶴

Rakuen 宮迫千鶴著
清流出版(
144p2009.01.19
2,940

画家・エッセイストである宮迫千鶴さんから最後のメールが届いたのは一昨年9月、彼女の早すぎる死の9カ月前だった。メールには「まだ、日本は暑さと闘ってます」と題名がついている。その1カ月前、会社を定年退職した僕はニューヨークに行ってアパートを借り、1年間滞在する予定で「不良老年のNY独り暮らし」なるブログを始めていた。メールは、それへの感想めいたものになっている。

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2008年11月 8日 (土)

「ランドマーク」吉田修一

Land 吉田修一著
講談社(208p)2004.7.15
1,470円

この本にインスピレーションを与えたと思われる3つの建築(計画)がある。ひとつは本文のなかでも引用されている、ロンドンのスイスRE社ビル。「ガーキン(ピクルスのきゅうり)」と通称されるとおりの形で、全面ガラス張りのユニークな高層ビルだ。上海香港銀行やセンチュリー・タワー(お茶の水)で名高い建築家、ノーマン・フォスターの設計になる。

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2008年11月 4日 (火)

「ラーメン鑑定書」 米塚 功

Ramen 米塚 功著
読売新聞社(198p)1998.02.13
1260円

語るも涙、戦いの記録
困った時の神頼みはラーメンとイタ飯特集と決まっているが、これは本格書、いや専門書といっていい。不思議に読売はラーメンの本好きだが、いつも視点は ユニークで、この書も調理法を克明に取材してある点、また、歯に衣着せぬ店の評価など驚異の作品とまでいえる。著者は大阪にて居酒屋経営、建築会社営業、下着販売店勤務を経て、新宿で喜多方ラーメンに出会い魅せられて一念発起、全踏破を決断し挙行、将来は同じ道 を歩みたいという。約2年のカプセルホテルへ泊まったり、その文字通りの貧乏旅行、ひたすらラーメンで生き続けた記録は今やっと刊行の形で報われた。

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「ラスト・サンクチュアリ」 クレイグ・ホールデン

Last クレイグ・ホールデン著 近藤純夫訳
扶桑社(478p) 1998.02.20 
2,190円

ロードムービー転じて
特にアメリカ映画が得意とする領域にロードムービーがある。旅の目的はいくらかささいなものであるにはあるが、道の果てはどうなるか知れない。見知らぬ 町、広大な砂漠、人々との触れ合い、「バグダット・カフェ」にその典型をみることができる。またその原形は「シェーン」にも認められ、さらにとんでもない 事件に巻き込まれるという点で「ダイハード」にも通ずる。この小説の主人公は目的は明白だ。だが、ロードムービーには違いない。

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