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われらが背きし者/我が家の問題/和解する脳/わが国金融機関への期待/我、拗ね者として生涯を閉ず/忘れられる過去

2013年1月 8日 (火)

「われらが背きし者」ジョン・ル・カレ

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ジョン・ル・カレ 著
岩波書店(518p)2011.11.07
2,730円

ジョン・ル・カレの愛読者だったのはもう40年近く前のことになる。最初に読んだのは世界的ベストセラーで映画にもなった『寒い国から帰ってきたスパイ』で、それまでスパイ小説といえばイアン・フレミングの007しか知らなかった身には、東西冷戦下、なんともリアルでぞくぞくするような物語だった。

そこから始まって、ソ連のスパイが現実に英国諜報部に潜り込んでいたキム・フィルビー事件を素材にした『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』、つづいて同じ主人公スマイリーが活躍する『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』と“スマイリー3部作”に熱中した。細かいストーリーは覚えていないけれど、どんより曇った空の下、さえない中年男のスマイリーが地道な調査と心理駆け引きでスパイを炙りだしてゆく、全編を貫く暗鬱な雰囲気は今も鮮烈に思い出すことができる。

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2011年8月 7日 (日)

「我が家の問題」奥田英朗

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奥田英朗 著
集英社(288p)2011.07.05
1,470円

事前に狙い定めて新刊本を買いに行くことは小説に限ってはほとんど無い。本書も、いつもの様に本屋の書棚を素見半分で眺めながら、ふと惹かれるものがあって購入。奥田の作品を読むのは初めてだが、小説としての構成の面白さや人物の心象を言葉に変換させる巧みさに才能を感じながら、週末でさっと読みきってしまった。

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2011年1月11日 (火)

「和解する脳」池谷裕二・鈴木仁志

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池谷裕二・鈴木仁志 著
講談社(240p)2010.11.17
1,470円

池谷は東大大学院薬学系研究科の准教授、鈴木は弁護士で東海大学法科大学院教授。ふつう対談というと「話し手」と「聞き手」の役割が明確に分離していたり、同一分野のプロが集まって問題を深堀りしていくという形態が一般的だが、本書は他ジャンルのプロである池谷と鈴木が対談する形をとっているので、話題によって「素人とプロ」というか「話し手と聞き手」が随時入れ替わるのも面白く、加えて進化生物学、脳科学といった先端諸科学の成果を判りやすく説明していることもあり興味深く読めた。
「和解する脳」というタイトルもなかなか意味深長であるが、法曹界を代表する鈴木と脳科学の池谷の双方の期待が良く現れている。

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2009年8月 6日 (木)

「わが国金融機関への期待」富永 新

Kinyu 富永 新
生産性出版295p2009.07.28
2,940円

ITリスク管理と事業継続の未来を拓く」と副題あるように、現在の金融機関はその事業活動においてITに依存する度合いは極めて大きく、そのリスク管理のあり方と事故・トラブル発生時の対応に関する考察実践的な経験に裏付けられ読み易くまとめられている日本の金融機関の多くは永年システムの開発と運用・保守に多大な資金と労力・英知を注いできた。そうした営々とした努力にも係わらずITの落とし穴とも言うべきシステム・トラブルを防ぎきれなかったも事実である。そうした金融機関のシステムが抱える課題や問題を経営的側面、管理的側面、技術的側面だけでなく、文化的側面から分析している。全体構成としてはチェックリスト的も活用出来るとともに網羅的な理解という意味からもカバーされているので、もっと早く手にしたかったと嘆く経営者やシステム部門の管理者たちの聞こえて来そうである

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2008年11月 9日 (日)

「我、拗ね者として生涯を閉ず」 本田靖春

Ware 本田靖春著
講談社(584p)2005.02.21

2,625円

戦後、それも1940年代後半から1950年代の高度成長以前のこの国の空気を追体験するとしたら何がいいだろ うか。生活のなかにテレビが登場し、世の中全体がカラフルになってくる以前の、貧しかったこの国の町の表情や人々の喜怒哀楽の感情を、いま実感しようとし たら何を見たり、何を読んだらいいのか。黒澤明の『酔いどれ天使』『野良犬』といった一連の現代劇。木村伊兵衛や土門拳のカメラが切り取った人びと。松本清張や水上勉の推理小説。「星の流れに」「カスバの女」など歌謡曲の数々。

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2008年11月 6日 (木)

「忘れられる過去」 荒川洋治

Wasure 荒川洋治著
みすず書房(269p)2003.07.25

2,730円

「忘れることができる過去」か「忘れられてしまう過去」と理解するのか。題名からして荒川ワールドにまず引き込 まれる。先年出版された「夜のある町で」の弟分か妹分と荒川が言っているように、この本には2001年から2003年にかけて各種メディアに発表された文 章を集めている。詩人であり、評論家でもある彼が持ち前の緻密かつ敏感な感性で組み上げた各行は、凝った文章でもなければ、小難しい単語を振り回しているわけでもない。独特な物事の把握やさりげない言い回しの中に心を揺するものがある。「言葉の力」を再認識させられた一冊。

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