「われらが背きし者」ジョン・ル・カレ
岩波書店(518p)2011.11.07
2,730円
ジョン・ル・カレの愛読者だったのはもう40年近く前のことになる。最初に読んだのは世界的ベストセラーで映画にもなった『寒い国から帰ってきたスパイ』で、それまでスパイ小説といえばイアン・フレミングの007しか知らなかった身には、東西冷戦下、なんともリアルでぞくぞくするような物語だった。
そこから始まって、ソ連のスパイが現実に英国諜報部に潜り込んでいたキム・フィルビー事件を素材にした『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』、つづいて同じ主人公スマイリーが活躍する『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』と“スマイリー3部作”に熱中した。細かいストーリーは覚えていないけれど、どんより曇った空の下、さえない中年男のスマイリーが地道な調査と心理駆け引きでスパイを炙りだしてゆく、全編を貫く暗鬱な雰囲気は今も鮮烈に思い出すことができる。
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